［タベサキ Vol.3］ご当地スーパーの味イツモノ

「メロンパン」（広島・メロンパン本店）

広島県

2018.12.27

タベサキ

ご当地スーパー研究家の菅原佳己さんが、そのエリアの食を支えるご当地スーパーで、地元の“いつも”の味をピックアップ！

広島県呉市の『メロンパン本店』
「メロンパン」182円（税抜）

なかには白あんのようなクリームがぎっしり！

広島で話題の商業施設「LECT」にある食品スーパー「you me食品館」で、一瞬のうちに魅了された不思議なパンは、お客様カウンターのガラスケース内に収められていた。スーパーなのに、対面販売でしか買うことのできないメロンパン。つくっているのは、呉市で昭和11年創業の老舗・メロンパン本店。社名がメロンパン本店なのは、創業からの看板商品がメロンパンであることが理由だ。

しかし、この記事を読んでいる東日本にお住まいの方々は、今、違和感でいっぱいのはず。メロンパンはまん丸と決まっているから。でも、このメロンパンの不思議はその中にある。まるで白あんかと見まがう、もっちりとしたカスタードクリームがぎっしり。

なんとも謎めいたメロンパン。その誕生について、三代目・中塩隆馬さんの妻・愛子さんはこのように聞いているという。創業者の春馬さんの好物は、楕円形のマクワウリ。当時、メロン型と呼ばれていた洋食用のライス抜き型こそが大好きなマクワウリと同じ楕円形で、その型で成形したパンをメロンパンと名付け、中身もウリの果肉に似せたのだと。

こういった年代の記録やエピソードによって、西日本における楕円形のメロンパンの発祥とも考えられている。

そんな春馬さんのネーミングセンスは独特。たとえば、いわゆる丸いメロンパンを「コッペパン」、チョコパンは「ナナパン」、食パンには「むろらん食パン」など。じつは春馬さんの体験や縁のあった固有名詞をイメージしての命名のため、パンの味や中身を説明するものが少ないのだとか。「店頭でご説明しないとわからないこともあり、スーパーでも対面販売で目の届く範囲で取り扱ってもらってます」との愛子さんの説明に納得。

最後に袋のメロン画について。じつはノスタルジックなだけではない！　よーく見れば、すべての網目が「MELONPAN」や「メロンパン」などの文字で構成されている、メロンパンづくしの力作なのだ。ひと目でメロンパンの虜になるのは、この美しきサブリミナルの影響なのかもしれない。

DATA

LECT you me食品館

住所
広島県広島市西区扇2-1-45
TEL
082-270-0051
営業時間
9:00～22:00
備考
※品揃えは予告なく変わります。価格は全て取材時の税抜き価格です。

Profile

菅原佳己（すがわらよしみ）

スーパーマーケット研究家。夫の転勤で国内外の転居を繰り返すうちに、スーパーの魅力に気づき、埋もれた日常食の発掘などの研究をスタート。ご当地スーパーやご当地グルメブームの火付け役として、テレビや雑誌、新聞などで活躍している。著書は『日本全国ご当地スーパー掘り出しの逸品』『日本全国ご当地スーパー隠れた絶品見～つけた！』（講談社）など多数。