夏の暑さもひと段落し、美しい景色を見に出かけたくなる秋。そんな時おすすめなのが「秋の海絶景」です。海水温と気温の差によって、この季節にしか発生しない気象景観に出会えたり、色鮮やかな秋の花と海のコントラストを楽しんだり、渡来時季が限られている白鳥を見に行ったり……。各地で異なった秋の風景が見られるのも、南北に長い日本ならでは。抜けるような青空に誘われて、秋の一日、今しか見られない海絶景を堪能する旅に出かけてみませんか。
文/合津玲子






能古島(のこのしま)は、博多湾に浮かぶ小さな島。福岡タウンからほど近く、フェリーで10分ほどの場所にありながら、市内とは全く異なる自然豊かな風景が広がり、リゾート気分が味わえます。島には自然公園「のこのしまアイランドパーク」があり、多彩な遊具や施設も完備し、“福岡のハワイ”と呼ばれ親しまれています。特に人気なのが季節ごとに変わる花畑。秋に咲くのは赤やピンクの色鮮やかなコスモス。10月上旬から下旬にかけて咲く50万本の“早咲きコスモス”、10月下旬から11月中旬にかけて咲く30万本の“遅咲きコスモス”と、2種類が植えられているので、長期間にわたり楽しめます。花畑の向こうには真っ青な博多湾が広がり、夢の世界に迷い込んだ気分に。
住所/福岡県福岡市西区能古1624
電話/092-881-2494
時間/平日9:00~17:30、日曜・祝日は~18:30(冬季は平日と同じ営業時間)
料金/大人1,200円



北陸きっての景勝地・雨晴海岸。海岸から3,000 m級の山が望めるのは世界でも数えるほどしかなく、青く澄んだ富山湾、女岩(めいわ)や義経岩などの奇岩、はるか遠方に立山連峰という景色は、一幅の絵さながらの美しさです。10月中旬ごろから立山連峰が冠雪すると、空や海の青さと雪の白さが見事なコントラストを描きます。くっきりとした山の姿が見られるのは、秋から初冬、そして春先になります。さらに、この季節の雨晴海岸名物といえば気嵐(けあらし)。海水温が気温より高い時に霧が発生する現象で、10月から2月にかけての冷え込んだ日、風が弱く、波が穏やかな早朝に観察できます。あたり一帯が霧に覆われ、朝日とともに七変化するさまは幻想的。一度は見てみたい秋・冬の絶景です。
住所/富山県高岡市太田雨晴
電話/0766-20-1547(高岡市観光協会)










日本八景に数えられる名勝、室戸岬はユネスコ世界ジオパークにも認定されている、地質学的にとても貴重なエリアです。景色も素晴らしいですが、9月から翌3月にかけて見られる「だるま夕日」「だるま朝日」も見逃せません。蜃気楼の一種で、海面の海水温と大気の温度差により発生する水蒸気に光が屈折し、海に沈む太陽がだるまのように見える現象です。よく晴れた日、そして大気と海水の温度差が大きい日によく見ることができます。縁起がいいと人気のだるま夕日・だるま朝日ですが、見られるのは30秒から1分ほど。なかなか出会えませんが、燃えるような赤い夕日、朝日は、それだけでも十分美しいので、ぜひ時間を確認して出かけてみましょう。
住所/高知県室戸市室戸岬町
電話/0887-22-0574(室戸市観光協会)

青森県の夏泊(なつどまり)半島の東側付け根にある浅所海岸は、古くから白鳥が飛来する海岸として知られてきました。毎年10月中旬を過ぎたころ、約3,000 kmも離れたシベリアから家族単位の集団で飛来し、寒さが募るごとにその数は徐々に増えていき、200~300羽を見る年もあるといいます。渡来するのはオオハクチョウという種類の白鳥で、シベリアで繁殖して、冬になると北海道や本州北部で越冬します。海岸では幼鳥を見られることも。3月下旬ごろまで滞在し、春になると北の空へと旅立っていきます。浅所海岸と白鳥は、「小湊のハクチョウおよびその渡来地」として全国で唯一、特別天然記念物に指定されています。冬の海を優雅に泳ぐ白鳥との貴重な一枚を、撮影してみてはいかが。
住所/青森県東津軽郡平内町(ひらないまち)
電話/017-755-2118(平内町役場 水産商工観光課 商工観光係)

