『八日目の蟬』
希和子は不倫相手の妻が産んだ赤ん坊を盗み、逃避行を続けます。運命が違えば私に授かったかもしれない子――この思いから、彼女は「娘」のために全力で生きようとするのです。たどり着いた小豆島の夏の光景が、未来の見えない心を解きほぐす場面が印象的。後半は「偽りだった母」の逮捕のあと、四歳で自宅に戻された子供のその後が描かれます。日常とは、いるべき場所とは、母娘とは、に迫る感動作。
649円/中公文庫
『母とヨーロッパへ行く
母+娘=100歳~の旅』
レーサーである夫の事故とリハビリ、子育て、自分の仕事が一段落した2009年、太田さんが望んだのは母親との旅でした。当時彼女は40代前半、一人暮らしのお母さんは60代後半。プランの立て方やコツのほか「数年前よかった場所にまた行く時は、親の今の体力を確認する」「高齢者にサプライズはいらない」など、本書は歳を重ねた人との日常のヒントにもなります。まずは母娘の国内旅行から始めてはいかが?
1,540円/講談社
『おいしいおはなし
子どもの物語とレシピの本』
子供の頃お母さんに「童話に出てくるお料理、お菓子を作って!」とおねだりしたことのある方は多いでしょう。本書は児童文学のおいしいレシピを40紹介。トム・ソーヤの無人島の朝ごはん「魚とベーコンのソテー」、ムーミン一家のキャンプのおとも「かぼちゃのジャム」など旅心をかきたてるメニューもあります。今度は私が作ってあげる番かな、という思いが満ちる1冊で、ビジュアル本としても素敵!
1,980円/グラフィック社
『ストーリー・オブ・マイライフ/私の若草物語』
こんなにも全シーンが愛おしい映画、ほかにないです。世界的ベストセラーである若草物語のリメイクではなく、女性の自立や出版にいたるまでの経緯も絡めた超意欲作。自立を人生のテーマとする4姉妹の次女ジョーの視点で進行します。「結婚だけが女の幸せなんておかしい でもどうしようもなく孤独なの」と葛藤するジョーに対して、母がジョーに伝えた言葉に視界は水浸し……。時代に合わせて4姉妹それぞれの個性を表現した服はアカデミー衣装デザイン賞を受賞しましたが、母とジョーに関しては“情熱の赤”というカラーでひそかにリンクさせているのがより素敵! アメリカ東部の美しい景観も見どころ。
『ふきげんな過去』
18年前に死んだといわれていた母親が高校生の娘の前に突然現れます。小泉今日子さんと二階堂ふみさん、ダブル主演で母娘を演じた作品です。ひとつ屋根の下、お互いに反発しつつも同じ時間を過ごす彼女たちは、人間の不器用さと愛おしさを浮き彫りにしていきます。誰かと一緒にいると多くを求めたくなりますが、お互いに愛おしくさえあればとりあえずOKなんだと前向きに。舞台となった現在も営業中の古民家カフェは昭和のノスタルジーを感じさせてくれます。劇中に出てくる会話は、巨大ワニや、お手製爆弾の話などぶっとんだエピソードばっかりなのに不思議なくらいまったりとした空気。シュールな日常を淡々とこなす彼女達を眺めていると、いつの間にか癒されているんですよね。
『眉山 -びざん- 』
余命数ヶ月の命の母を看取ろうと決心した矢先、母が献体を申し込んでいたことを知らされた娘。少しずつ母の想いに触れていきます。さだまさしさんの原作小説も素晴らしいのですが、映像化によって伝わる美しい徳島の風景、そして阿波踊りはとにかく圧巻の躍動感! これまで自分の弱さをけっして見せずに凛としていた頑固な母親が、少しずつ弱っていきながらも、それでも“自分の美学”を通して生きようとする逞しさ、痺れるほどかっこいい。自分はどんな信念を持って、いまこの人生と対峙すべきか。いつしかセラピーみたいに自分の内面と向き合うきっかけに。宮本信子さんの存在感、松嶋菜々子さんの美しさ。まさに本物の親子のようです。