タビマエに読みたい。北海道・空知エリアが登場する文学作品とその舞台を完全網羅!

北海道

2023.07.18

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タビマエに読みたい。北海道・空知エリアが登場する文学作品とその舞台を完全網羅!

10の市と14の町からなる北海道・空知エリア。石狩川が流れる平野が広がり、自然豊かな風景に出会えます。明治~昭和にかけて農業や鉄道が開拓されたり、炭鉱で栄えていたりした歴史を持つ町も多く、そんな大自然や歴史を活かして、さまざまな漫画や小説などの舞台になってきました。空知エリアを旅するなら、舞台として登場する作品に触れて、旅の解像度を上げてから訪れてみませんか。

Text:アントレース

目次

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アイヌの金塊を巡るサバイバルバトル漫画『ゴールデンカムイ』×「月形樺戸博物館」(月形町)

石狩川のほとりに佇む監獄で次々と巻き起こる奇怪事件 『地の果ての獄』×三笠市

「この夕張で生きていきたい――」廃校が決まった実在の中学校が舞台 『最後の卒業生』×夕張市

父の厳しい開拓の様子を等身大に描く 『馬追原野』×長沼町

おわりに

アイヌの金塊を巡るサバイバルバトル漫画『ゴールデンカムイ』×「月形樺戸博物館」(月形町)

『ゴールデンカムイ』(集英社) 野田サトル/著

『ゴールデンカムイ』(集英社) 野田サトル/著

『ゴールデンカムイ』は、平成26(2014)年~令和4(2022)年まで『週間ヤングジャンプ』に連載された漫画(全31巻)です。舞台は、明治時代の北海道。“不死身の杉元”と呼ばれる日本帝国陸軍の元兵士とアイヌ民族の少女が、アイヌの金塊を巡って壮絶なバトルを繰り広げます。

樺戸集治監本庁舎などを活用した館内には豊富な歴史資料が展示されている

物語に登場する「樺戸集治監(かばとしゅうじかん)」は、政治犯などの収容のほか、囚人によって周辺を開拓する目的で明治14(1881)年に開監されました。大正8(1919)年に廃監となりましたが、それまでの歩みを紹介しているのが「月形樺戸博物館」です。著者は北海道北広島市出身。取材で同監を訪れて、典獄(刑務所長の略称)の執務室などを描きました。ほかにも同監に収容された画家・熊坂長庵など、作中に登場する人物に関する展示もあり、多くの読者が足を運ぶ施設になりました。


◆月形樺戸博物館
住所:樺戸郡月形町1219
営業時間:9:30~17:00(最終入館16:30)
定休日:12月1日~3月19日(3月20日~11月末の開館期間中は無休)
アクセス:電車:JR学園都市線「北海道医療大学駅」より月形町行き代替バスで約37分
車:札幌から国道275号線経由で約1時間10分
電話:0126-53-2399

石狩川のほとりに佇む監獄で次々と巻き起こる奇怪事件 『地の果ての獄』×三笠市

『地の果ての獄 山田風太郎ベストコレクション 上・下巻』(KADOKAWA/角川文庫) 山田風太郎/著

『地の果ての獄 山田風太郎ベストコレクション 上・下巻』(KADOKAWA/角川文庫) 山田風太郎/著

「樺戸集治監」に関連する話をもう一つ。『地の果ての獄』は、明治時代に実在した薩摩出身の刑務官・有馬四郎助の若き日の姿を描いた時代小説です。有馬はクリスチャンで“愛の典獄”と呼ばれ、監獄の改良や行刑制度の確立に尽力し、生涯を免囚保護に捧げたことで知られています。物語では、薩摩から北海道月形町の「樺戸集治監」に赴任し、さらに三笠市の「空知集治監」に移動となった有馬を中心に、強烈な個性の囚人たちとのさまざまな交流や事件が展開されていきます。

明治23(1890)年に典獄官舎が新築された際に造られた

明治23(1890)年に典獄官舎が新築された際に造られた

現在、典獄の官舎の跡地には、囚人らの手によって造られた旧空知集治監典獄官舎レンガ煙突が建っています。レンガ煙突は日本遺産「炭鉄港(たんてつこう)」の構成文化財であり、「炭鉄港」とは空知の石炭を基軸に、室蘭の鉄鋼、小樽の港湾、これらを繫ぐ炭鉱鉄道をテーマで結ぶことにより、人と知識の新たな動きを作り出そうとする取り組みです。


◆三笠市
アクセス:電車:岩見沢駅よりバスで市の中心部まで約25分
車:道央自動車道「三笠IC」より市中心部まで約25分

「この夕張で生きていきたい――」廃校が決まった実在の中学校が舞台 『最後の卒業生』×夕張市

『最後の卒業生』(河出書房新社) 本田有明/著

『最後の卒業生』(河出書房新社) 本田有明/著

児童書や青春小説で知られる作家・本田有明による『最後の卒業生』は、平成22(2010)年に閉校となった夕張市立緑陽中学校の最後の卒業生をモデルにした、ドキュメンタリーの中にフィクションを織り交ぜた小説。卒業生たちが悩みを抱えながらも未来へ向かう姿が生き生きと描かれています。

夕張市には3つの中学校がありましたが、市の財政再建計画に沿って1校に統合され、夕張市立緑陽中学校は廃校となりました。現在も鉄筋校舎は残され、敷地内に立ち入ることはできませんが、外から見ることができます。


◆夕張市
アクセス:電車:JR新夕張駅よりバスで市の中心部まで約40分
車:道央自動車道「夕張IC」より市中心部まで約20分

父の厳しい開拓の様子を等身大に描く 『馬追原野』×長沼町

マオイ文学台

一面に広がる長沼町の大豆畑

北海道の開拓をテーマにした文学作品は数多くありますが、その中でも“開拓文学の最高峰”と称されるのが長編小説『馬追原野』(北書房)です。著者の辻村もと子は北海道の生まれで、現在の長沼町の開拓を手がけた父・直四郎の開拓日記をもとに、小説を書き上げました。昭和19(1944)年に、女流作家に与えられる第一回樋口一葉賞を受賞しています(戦争のため1回で終了)。
現在では、道内でも有数の米どころとして知られる長沼町ですが、開拓当時は原生林に囲まれた荒れ地だったと言います。この作品を読んだうえで長沼町を巡れば、開拓者らの想像を絶する苦労と努力、そして諦めない心を感じ取ることができるでしょう。昭和47(1972)年には、長沼開拓を描いた郷土の文化遺産として、馬追丘陵に文学碑「馬追原野」が建てられました(マオイ文学台)。眼下には、直四郎が鍬を入れた農場とともに石狩平野が広がり、長沼町を一望できます。


◆夕張郡長沼町
アクセス:電車:JR北広島駅よりバスで町の中心部まで約50分
車:札幌より国道・道道札夕線経由で町の中心部まで約50分

おわりに

今回紹介した中から、自分好みの作品を選んでじっくり読破し、舞台となった場所を巡ってみましょう。加えて、美唄(びばい)市・空知エリアの魅力を盛り込んだ『月刊旅色2023年7月号』も読めばタビマエ準備は完璧です。『地の果ての獄』で日本遺産「炭鉄港」を解説しましたが、それに絡んだ名物料理を紹介する特集も。ぜひご覧ください。

月刊旅色2023年7月号
「月刊旅色2023年7月号」はこちらから

北海道・空知エリアがロケ地だった映像作品をまとめた記事も併せてチェック。

タビマエに観たい。北海道・空知が登場する映像作品とそのロケ地を完全網羅!

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#旅 #聖地巡礼 #空知 #ゴールデンカムイ #月形町 #長沼町 #三笠市 #夕張市 #小説 #お盆 #夏休み

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