「これからの沖縄・那覇観光は“何度来ても楽しめる”がキーワード」 沖縄観光コンベンションビューロー 黒島伸仁さんインタビュー

沖縄県

2024.04.25

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「これからの沖縄・那覇観光は“何度来ても楽しめる”がキーワード」 沖縄観光コンベンションビューロー 黒島伸仁さんインタビュー

コロナ禍を経て、日本全国に海外からの旅行客が多く戻りつつあります。そうなると気になるのが、多すぎる旅行客によって現地でさまざまなトラブルが引き起こされる「オーバーツーリズム」。そこで、『月刊旅色5月号』で取り上げる沖縄・那覇にスポットを当て、沖縄観光コンベンションビューロー(以下:OCVB)の黒島さんにこれからの観光についてお話を伺いました。観光地も観光客も、皆が幸せになる方法を探ります。

目次

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コロナ禍を経てたどり着いた、新たな“観光の形”

“旅行の質の向上”と“リピーターを増やす”ことを目指す

王都・那覇は「沖縄のさまざまな側面が見られる」ところ

おわりに

旅色LIKES

県外からの観光誘致のほか、観光と地域の共存・共生に向けて取り組む。石垣島出身で、子どものころからかばんに釣り竿を忍ばせて登校していた生粋の釣り好き。沖縄そばは、豚骨スープよりカツオだしが強めなのが好み。

OCVBが運営する沖縄観光情報WEBサイト「おきなわ物語」が旅色の旅行プランでも活動中

那覇は、2023年から「ダイワロイネットホテル那覇おもろまちPREMIER」や「オリオンホテル 那覇」などホテルのオープンラッシュが続いています。さらに、2025年には沖縄北部に大型テーマパーク「JUNGLIA(ジャングリア)」の開業、2026年には首里城の正殿復元も予定されているなど、観光にまつわる話題が尽きません。

コロナ禍を経てたどり着いた、新たな“観光の形”

旅色LIKES

国内航空各社が4月19日(金)にまとめた2024年のGW(4月29日(月)~5月6日(月))の沖縄路線の予約人数は、前年比7.1%増の37万800人となった(写真/村上未知)

――羽田から那覇までの飛行機がほぼ満席でした。コロナ前に比べて、観光客は完全に戻ってきましたか?

かなり戻りつつあります。全国から沖縄に就航している直行便が 23路線 あり、OCVBでは、その直行便を利用して沖縄に来てもらおうと力を入れています。たとえば、沖縄と直行便で繋がる静岡県や山口県岩国、愛媛県松山、香川県高松、鹿児島県や宮崎県などから直行便を利用して来てもらえるように、とPR活動に取り組んでいます。ただ、単に観光客を誘致するフェーズではないと考えています。これまでは「入域観光客数1,000万人」(※)を目標に情報発信をしていたのですが、2020(令和2)年の新型コロナウィルスの蔓延を機に、離島での医療体制を考慮した入島制限などをしました。そういった事例をきっかけに、これからはエリアごとの事情に配慮した誘客が必要だと痛感したんです。

――例えばどんなものですか?

沖縄は島しょ県ということで、それぞれの島や地域によって観光客を受け入れられる許容量が異なるという事情があります。何でも揃っている都市部の観光地とは異なり、小さな離島の中には、食事処や宿泊施設の数に限りがあり、ある程度、事前の心構えや準備が必要になってきます。一方で、その島や地域にしかない豊かな自然や独自の文化などの唯一無二の魅力があるので、魅力の発信に加えてエリアごとの事情に配慮した情報発信が必要となってきます。そうした島や地域ごとに異なる事情にも配慮した旅行を楽しんでいただくためにも、そこで暮らす人たちの意見に耳を傾けることが重要だと思っています。

※入域観光客数1,000万人:2018(平成30)年度の沖縄への観光客の人数で、過去最高数値だった。

“旅行の質の向上”と“リピーターを増やす”ことを目指す

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「一度だけでなく、何度でも沖縄にきて、いろんな体験をしてほしい」と語る黒島さん

――その土地の事情に配慮することで唯一無二の旅体験ができるんですね!

「そこでしかできない体験」をキーワードにしています。「旅行の質の向上」は結果的に観光客にとっても観光地によっても重要な課題です。

――「旅行の質の向上」とは、どのようなものでしょうか?

その土地の食材を使った料理を食べてもらったり、沖縄でしかできない体験や沖縄だからこそ買えるお土産を選んでもらったり、訪れる方もしっかり満足し、旅先にもうれしい旅。そうした旅のスタイルを提唱していきたいですね。これまで力を入れてきた「南国リゾート沖縄」のイメージはある程度浸透してきたと思いますが、それだけではない、「沖縄独自の価値」に気づいてもらえるプロモーションに転換し始めています。やはり、コロナ禍で立ち止まったのが大きかったですね。

――その土地ならではのものの体験が気に入れば、何度も訪れたくなりますもんね。

国内の市場は人口減少により縮小しつつある環境の中で、これまで通り「多くの人」に沖縄に来てもらうというのも非常に大事ではあるのですが、国内市場の環境が変化していく中においてはリピーターを増やしていくことが、沖縄が観光地として発展していく上でとても重要だと考えています。

――県内ではホテルの開業ラッシュが続いていたので、ますます呼び込んでいくのかと思っていました。

確かに、ホテル数は右肩上がりで増えています。その結果、旅行スタイルの選択肢が増えたことで、沖縄を旅先として選んでもらえる可能性が高まるのでとてもいいことです。

――これからもニューオープンが続きますが、注目しているものはありますか?

いま注目されているのは、2025年に開業予定の「JUNGLIA」でしょうか。このオープンを機に沖縄の情報が外に発信されていくことはインパクトがありますね。また、その翌年には首里城正殿復元もありますので、沖縄観光にとってトピックが続きますね。

――まさに、何度来ても楽しめますね。

観光施設の開業が呼び水となって沖縄を旅先として選んでもらえたら嬉しいです。その一方で離島だと「何もない」ことも良さだったりするので。地域の方々のご意見と訪れる方のニーズとのバランスをとって情報発信をしなければと思います。

王都・那覇は「沖縄のさまざまな側面が見られる」ところ

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那覇市内には、琉球王国時代の栄華を感じるスポットも点在している(写真/村上未知)

――では、那覇はどんなまちでしょうか。

沖縄の玄関口で、県内でも来訪者数が一番多いまちです。県外から訪れる人にとって、このまちの印象次第で沖縄の見え方が大きく変わると思うので大事な場所だと思っています。

――那覇ならではの魅力はなんですか?

琉球王国の首都があった首里を中心に栄えたまちで、「王国文化」とキャッチコピーを付けているほど琉球王朝の歴史が垣間見えるような施設が至るところにあることは大きな魅力です。例えば、交易品としてだけではなく、王朝時代の礼装や神事の衣装として重宝された織物や染物を作っている工房や、泡盛の酒蔵所があるので、まち歩きをしながら歴史や文化に思いを馳せることができます。また、華やかな歴史だけではなく、第二次世界大戦の記憶を彷彿させるスポットもあります。例えば、慶良間チージ(きらまちーじ・米軍はシュガーローフとも)という戦跡が那覇新都心の中心地の「おもろまち」周辺にあるのですが、沖縄が幾度となく経験した「世替わり」の歴史を知るうえでは興味深いところ。皆さんがイメージしている沖縄とは違った側面が見られると思います。

――そういった場所に触れると、沖縄への理解が深まり、滞在がさらに楽しくなりそうです。

実は、沖縄に来る人の9割以上がリピーターと言われていて、初めて来たとき「王道の沖縄観光」を楽しみ、2回目以降は町中にあるスーパーや市場など、よりディープなところに出かける方が多いようです。SNSでの情報もありますし、「どうしてそんな場所を知っているの!?」なんて驚く場所に訪れている方もいるんですよ。皆さんそれぞれにとって「自分が好きな沖縄」を求めて旅をされていると思うと感慨深いですし、これからもそういうふうに沖縄を大切に思ってくれる方を増やしていきたいと思っています。

おわりに

旅色LIKES

沖縄・那覇には単に「青い海、のんびりした島時間」だけではない魅力があるのだと気づかされました。それを守っていくためにも、どうしたら現地の人が喜んで受けて入れてくれるかを考えるのは旅行者の役割かもしれない、と感じました。沖縄に限らず、どこかを旅するときは楽しむだけでなく、その土地に住んでいる人の気持ちに寄り添って旅をしたいですね。月刊旅色5月号では沖縄・那覇の旅を特集中ですので、併せてご覧ください。

月刊旅色5月号はこちら

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#沖縄 #旅色LIKES #那覇 #沖縄観光コンベンションビューロー #おきなわ物語 #インタビュー

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東京都出身で、御朱印集めやおいしいグルメ探しが好き。最近はキャンプも◎。元添乗員&温泉ソムリエで、得意なエリアは京都・奈良。

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