テーマのある旅 “冬だけの”を楽しむ十勝旅
雪と氷と大空にときめく
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“冬だけの”を楽しむ十勝旅

寒さは厳しいけれど「十勝晴れ」と言うほど晴天に恵まれ、
絶景を見に出かけるにもぴったりな十勝の冬。
雪国だからこそつくられる、寒すぎるからこそ生まれる、
そんな冬にしかない自然の数々に感動できる旅をしてみませんか?

文/緒方麻希子

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Have a nice trip!
透き通る氷が海辺できらり ジュエリーアイス

Spot01 透き通る氷が海辺できらり ジュエリーアイス

北海道 豊頃町

名の通り宝石のように輝くジュエリーアイスは、厳冬の限られた期間にだけ大津海岸で見ることができます。その透き通る氷塊は、真冬に十勝川が氷結したもので、自然現象の中でつくり出されていきます。十勝川を覆い尽くす氷が割れて太平洋に流れ出て、波にもまれていくうちに丸みを帯び、流氷とは異なる透明さを増します。そして、カランコロンと音を奏でながら海岸に打ち上げられるのです。さまざまな形をしたジュエリーアイスは、夜明け前の深い青から、朝焼けの赤が差し込み、朝日が昇るとオレンジに染まって、日中は澄み切った空のように青く輝き、夕焼けを浴びながら黄金色へ。色を持たないからこそ、太陽の動きとともに刻一刻とその輝きと美しさを変化させていきます。その光景は、いつまでも眺めていたくなるほど胸を打たれるものです。

住所/中川郡豊頃町大津海岸
時期/1月中旬~3月上旬頃
電話/015-574-2216(豊頃町観光協会)

透き通る氷が海辺できらり ジュエリーアイス
透明な氷塊が時間の流れに伴って何色にも輝く
透き通る氷が海辺できらり ジュエリーアイス
同じ形のものは存在しない

Spot02 結氷、雪景色など多彩に変化 オンネトー

結氷、雪景色など多彩に変化 オンネトー
オンネトーはアイヌ語で「年老いた沼」「大きな沼」の意味。氷結した湖面には阿寒の山々や空が鏡のように湖面に写る
北海道 足寄町
オンネトー湯の滝
国の天然記念物「オンネトー湯の滝」まで足をのばすガイドツアーも。温泉が噴出していて、冬は温度差で湯気がよくわかる
トレッキング
山々や植物、動物を身近に感じられるトレッキング。雪景色の中を歩くのは、新雪を踏む音や感触にも感動する

オンネトーは、阿寒摩周国立公園の最西端に位置する湖です。雌阿寒岳(めあかんだけ)の麓にあり、原生林に囲まれています。季節や天候、風向きなどによって多彩な色へ変化することから、別名は「五色沼」です。冬になりいくつかの条件が揃うと、湖面は結氷が始まります。結氷すると湖は一面、エメラルドグリーンの氷に。ダイナミックな白いラインや湖の底から湧き出るガスが凍ったアイスバブルが美しさをより一層際立たせ、目を奪われます。そして、風や温度差で氷がきしむことで発せられる“湖の音”を聞ける場合もあるとか。ただし、結氷を見られるのは湖が雪に覆われるまでのわずか数日間。降雪後からの楽しみは、スノーシューを履いてのトレッキングです。観光協会や民間が開催しているツアーがあり、湖上から望む雪化粧をした雌阿寒岳や阿寒富士は壮観。動物の足跡を見つけられるなど、真っ白な雪の上を歩くのは楽しみもいっぱいです。

住所/足寄郡足寄町
時期/結氷11月末頃~12月上旬までの数日間、スノーシュートレッキング12月の積雪後~2月末頃まで
電話/0156-25-6131(あしょろ観光協会)
※冬期はオンネトー付近の道道が車両通行止めになるため、オンネトーを車で見に行くことはできません。スノーシューなどの冬山の装備を十分に整えてください。ガイドの案内を受けて訪れてください。

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Spot03 きらめく無数の星と惑星をその目に りくべつ宇宙地球科学館

りくべつ宇宙地球科学館
銀河の森天文台があるのは標高約360mの丘の上。人工の光とは無縁で満天の星を楽しめる

小高い山に囲まれている陸別町は、寒冷な気候で空気が澄んでいるからこそ、星空をきれいに望むことができる町です。1997(平成9)年には「星空にやさしい街10選」(環境庁/当時)に選定され、人工の光が少ない自然環境を生かして「りくべつ宇宙地球科学館」がつくられました。「銀河の森天文台」の愛称で親しまれている同館には、一般公開用では国内屈指の大きさを誇る口径1.1mの反射望遠鏡「りくり」をはじめ、小型望遠鏡や大型双眼鏡、4連太陽望遠鏡などで大空を観望することができます。見られるのは、その時期の惑星や月、星雲、星団、銀河などの多様な天体。晴れの日は昼間でも明るい恒星を観賞可能です。望遠鏡の先に見える、遥か彼方の天体は息をのむほど美しく感動的。スタッフの方が解説してくれるのも、好奇心が満たされて楽しいです。プラネタリウムの上映や展示もあり、天体の魅力にどこまでも浸れます。

住所/足寄郡陸別町宇遠別
電話/0156-27-8100
時間/10月~3月 13:00~21:30、4月~9月 14:00~22:30
料金/昼:大人300円、小人(小・中学生)200円、夜:大人500円、小人(小・中学生)300円
※昼:10月~3月 13:00~17:00、4月~9月 14:00~18:00、夜:10月~3月 17:00~21:30、4月~9月 18:00~22:30
休館日/月曜日、火曜日、12月28日~翌年1月3日、5月第3週月曜日~第4週金曜日
※5月3~5日、8月14~16日は、月曜日・火曜日でも開館

北海道 陸別町
反射望遠鏡「りくり」
口径1.1mの反射望遠鏡「りくり」。天体を間近に感じて観望できる
霧氷

Spot04 氷点下20℃で見る氷の樹 霧氷

北海道 更別町

十勝平野の南部に位置し、日高山脈を一望する更別村。内陸性の気候で、冬は平均気温が氷点下になる寒さの厳しい日が続きます。そんな極寒の地だからこそ見られるのが霧氷です。霧氷は、氷点下のときに樹枝などにできる氷の層。更別村では、氷点下20℃を下回る早朝に、猿別川(さるべつがわ)の水面から立ち上がる水蒸気が草木に付着して霧氷になります。霧氷と雪の大地とが織りなす白銀の世界は静かで、寒さを忘れてしまいそうなほど美しいもの。日の出を迎えると、朝日が真っ白な霧氷を段々と赤く染めていき、あたりは幻想的。その瞬間を写真におさめようと、カメラを抱えた人たちが全国から訪れています。霧氷は限られた条件をいくつか満たしたときにのみ発生するので、早起きしてチャレンジしましょう。

住所/河西郡更別村字勢雄
時期/1月中旬~2月上旬頃
電話/0155-52-2211(更別村観光協会)

霧氷
立ち上る蒸気霧も情緒たっぷり
霧氷
朝日が樹々の間から霧氷を照らす

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Spot05 五感で冬の大自然を満喫できる雪の村 しかりべつ湖コタン

しかりべつ湖コタン
北海道 鹿追町
アイスバー
アイスバーでは、ホットドリンクも飲める
氷上露天風呂
温泉と外気温の差が60℃にもなるという氷上露天風呂。源泉を湖畔から沖まで約100m引き込んで訪れる人を温めている

然別湖(しかりべつこ)は大雪山国立公園にあり、標高約810mという道内で最も高い場所に位置する自然湖です。周囲約13.8km、最大深部は約108mある湖は厳寒の冬になると凍結し、その氷上に例年1月~3月の約40日間だけ、地元の有志などがつくり上げるコタン(アイヌ語で村)が現れます。一面に点々とするのは、イグルー(氷のドーム)。それも、雪に湖の水をかけてシャーベット状にしたものを固めたブロックでつくられたもの。それぞれ、宿泊できる「アイスロッジ」、氷のグラスでカクテルを飲める「アイスバー」、キャンドルナイトが開催される「アイスチャペル」など、別世界を訪れたかのような時間を過ごせます。然別湖の温泉を引いた「氷上露天風呂」で昼は雪の絶景に、夜は星空に囲まれながら湯浴みや足湯ができるという、唯一無二の体験も旅の思い出におすすめです。

住所/河東郡鹿追町然別湖畔
開催期間/1月下旬~3月上旬 ※2024年は1月27日~3月10日
時間/9:00~20:00
料金/小学生以上500円(入場シーズンパス/協賛金)
定休日/期間中無休
電話/0156-69-8181(北海道ネイチャーセンター)

アイスチャペル
アイスチャペルでは2023年までに30組以上の結婚式が行われた

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糠平湖のアイスバブル
時間が止まったかのように固まっている無数の泡は、ひとつとして同じ形はない

spot06 氷に閉じ込められた神秘的な美 糠平湖のアイスバブル

北海道 上士幌町

日本一大きな国立公園の大雪山国立公園にある糠平湖。糠平ダム建設に伴って1956(昭和31)年に完成した人造湖です。原生林に囲まれ、豊かな自然と調和した湖は、アウトドアや釣りのスポットとしても人気の一方、アイスバブルは冬の風物詩です。湖の底から発生するガスが湖面に到達する前に、水の中で凍っていくという現象で、いくつもの白い気泡が湖底から層状に連なって氷結し、糠平湖の一面に広がっています。人の手ではつくれない大小さまざまな泡模様がどこまでも続く光景は、周りの森林とも相まってとても神秘的。天気や一日の時間帯によって、凍りついた湖面の輝きや色味がそれぞれ違った表情を見せてくれます。見られるのは雪が降る前までという、貴重な氷の芸術を楽しみましょう。

住所/河東郡上士幌町ぬかびら源泉郷
時期/1月上旬~2月下旬頃
電話/01564-4-2224(上士幌町観光協会)

タウシュベツ川橋梁
夏には湖底に沈み、水位が下がる1月頃から湖面に姿を現すアーチ橋「タウシュベツ川橋梁」を望めるのも、冬だからこそ