日常を感じるまち、空知へ 味に“よりみち” #1

空知 不毛の土地が日本有数の米どころへ

肥沃な大地と豊かな四季、そして広大な土地を生かして日本有数の米の産地となった北海道。
かつては冷害や水害で稲作がうまくいかず、
道内では「お米は買わないと食べられない高級品」といわれていました。
そんな時代を乗り越えた歴史を知ればもっとおいしくなるはず。
北海道米の歴史を紐解きつつ、道内で生産されるお米の半数近くを生産する空知を代表するお米をご紹介します。

文/清水彩純(旅色編集部)

北海道で稲作は無理!?歴史を変えた一大プロジェクト

日本に米づくりが伝わってきたのは縄文時代後期といわれています。北海道で稲作が始まったのは江戸時代。明治になると北海道開拓のため本州から多くの人々が移住し、米づくりに取り組みますが、石狩平野には「泥炭地(でいたんち)」という、気温が低く植物が完全に分解されずにできた土(泥炭)が積み重なった、作物を育てるのには向かない土地が広がっていました。そこで土地の改良に国が乗り出し、昭和30(1955)年には世界銀行から当時のお金で140億円、現在に換算すると1,000億円に近い金額を借り入れ、工事をスタート。50年近くをかけて農地へと生まれ変わった土地の広さは約12,000ヘクタールと、札幌ドーム約2,000個分にあたります。さらに、寒さに強くおいしいお米になるよう品種改良を重ね、昭和63(1988)年、「きらら397」という品種が誕生しました。噛むほどに甘く、粒感がしっかりしている「きらら397」はそれまでの北海道米のイメージを一新。某牛丼屋で使うごはんの半分以上が南空知産の「きらら397」だそう。いまや北海道は米の収穫量が全国2位となり、すっかり「米どころ」のイメージが定着しました。

米づくりの粋を集めた最上級品種 ゆめぴりか

ゆめぴりか

長きにわたる、北海道の米づくりの技術や知見を総動員して生み出された品種。お米の味を判断する「食味ランキング」(日本穀物検定協会)にて平成22(2010)年~令和4(2023)年まで最高位の特Aを13年連続獲得しました。比較的大粒で一粒一粒がしっかりとした食感。炊き上がると粘りと弾力が出て、また香りもよく、口に入れると豊かな甘味が広がります。白く透明感のある粒も特徴で、白ごはんで食べるのがもっともその良さを味わえます。空知では、妹背牛町やJA新すながわ(砂川市、奈井江町)などがプライベートブランド米を展開しています。

道外でも認知度上昇中 ななつぼし

ななつぼし

北海道で最も食べられている品種。甘みと粘りのバランスが非常に優れています。北海道の清らかな空気のなかに輝く美しい星をイメージして作られました。ゆめぴりか同様に13年連続で最高位の特A評価を獲得。認知度も着実に上昇し続けている注目のブランドです。空知地域では、JAそらち南(由仁町、栗山町)やJAいわみざわ(岩見沢市、三笠市、美唄市)などがプライベートブランド米として展開。特に美唄では、雪エネルギーを活用して、玄米を低温で貯蔵する「雪蔵工房」や、水田の畦道に雑草の抑制や虫よけに効果のあるハーブを植え、農薬の使用量を抑えた「香りの畦みちハーブ米」などユニークなブランドを展開しています。

生産者の厳しい掟でブランドを守り続ける ふっくりんこ

ふっくりんこ

ふっくらした食感と心地よい甘さが特徴です。道南地域で生まれ育ち、現在は道南と一部の空知地域で栽培されています。生産者たちで構成される「ふっくりんこ産地サミット推進協議会」が栽培、出荷、品質の基準を定めており、すべての基準をクリアしたお米に公認マークを付けて流通しています。高品質なお米を作り続けることで「プロ御用達のお米」を目指し、現在は料亭などでも使用されているそう。空知地域では、JAきたそらち、JAピンネ、JAきたかわなどがプライベートブランド米として展開しています。

粘りと風味の革命品種 おぼろづき

おぼろづき

北海道で認定された普及すべき優れた品種として、平成17(2005)年に奨励品種に採用されました。北海道米の中でも最も強い粘りを持っていることが特徴です。ほかの品種が約20%のアミロース含有率を有するなか、おぼろづきは約14%と適度に低く、これまでの北海道米にはなかった独自の味を生み出しました。ほのかな甘みと独特の風味があり、冷めても固くなりにくく、お弁当にも最適です。米粒の色が、春の夜に霞んで見える朧月を連想させることから命名されました。空知地域では、JAびばいなどでプライベートブランド米として展開されています。