2月14日から始まる、NHK大河ドラマ『青天を衝け』の主人公・渋沢栄一。彼は約500の企業の設立と約600の社会公共事業に関わり、日本の資本主義の発展に大きく貢献をした人物です。そんな今注目の渋沢栄一について知りながら、ゆかりの地をめぐる旅に出かけましょう。
文/松尾好江(ランズ)
喜寿(77歳)を祝い建築したという
趣向を凝らした記念堂
渋沢栄一は、明治6(1873)年、日本で最初の銀行とされる「第一国立銀行」(現みずほ銀行)を設立しました。その後、明治29(1896)年に「第一銀行」となり、初代頭取を務め、喜寿(77歳)を迎えるのを機に頭取を退任。同行の行員たちの出資により、喜寿のお祝いとして東京・世田谷区にあった保養地に「誠之堂(せいしどう)」が建築されました。こうした行員たちの行動から、渋沢が慕われていたことがうかがえます。その後、平成11(1999)年に深谷市に移築されました。
深谷市で生産されたレンガを使った外観は、イギリスの農家をイメージしています。また内観の装飾には、中国などの東洋的な意匠を取り入れており、大正時代の美意識を感じられます。
誠之堂
住所/埼玉県深谷市起会110-1(大寄公民館敷地内)
営業時間/9:00~17:00(入館は16:30まで)
休/年末年始
アクセス/電車:JR高崎線、湘南新宿ライン深谷駅からタクシーで約15分、車:深谷バイパス上武ICから約15分
電話/048-577-4501(深谷市教育委員会文化振興課)
渋沢の書室をイメージしたサロン
渋沢栄一が「第一国立銀行」を開業し、銀行発祥の地といわれる日本橋・兜町に、令和2(2020)年2月にオープンした複合施設「K5」。このビルは、第一国立銀行の別館として大正12(1923)年に建設されました。
当時、渋沢の書斎・執務室だった場所である、K5の1階には、真っ赤な絨毯やソファーが印象的な図書館とバーが一体になったサロン「青淵 -Ao-」があります。ドリンクや本から渋沢の夢を追想できるというコンセプト。家業の藍問屋を手伝っていた10代前半までをイメージしたカクテル「Mid-day Spritz」は、水出しのほうじ茶をベースにウォッカ・松脂を使ったワインを少し使い、きび糖による甘さを加え炭酸で割ったもの。日中はティーサロンとしても営業しています。
青淵 -Ao-
住所/東京都中央区日本橋兜町3-5 K5ビル 1F
営業時間/平日:17:00~LO 25:00、土曜日:15:00~LO 25:00、日・祝日:15:00~LO 23:00
休/不定休
アクセス/電車:東京メトロ東西線、日比谷線茅場町駅から徒歩約5分
電話/03-5962-3485(K5)
日本初の官営模範器械製糸場を設立
平成26(2014)年に、「富岡製糸場と絹産業遺産群」として世界文化遺産に登録された「富岡製糸場」。この設立も、渋沢栄一が関わっています。渋沢は、明治政府の大蔵省租税正担当として、設立に向けた計画や調整に関わっていました。彼が任命されたのは、農家出身で蚕を育てることや蚕の卵に詳しかったからだといわれています。また、渋沢のいとこであり明治政府の役人だった尾高惇忠が工場建設の指揮を執り、韮塚直次郎が資材調達を担い、富岡製糸場の設立に尽力しました。
明治5年、富岡製糸場は、輸出品だった生糸の品質向上と増産のため、明治政府により官営として設立。官営の模範工場として、日本各地に器械製糸技術を伝え、世界的な絹産業の革新に貢献しました。また、フランス人の指導者ポール・ブリュナらの力も借りることで、西洋の技術を取り入れた富岡製糸場を設立したのです。
富岡製糸場
住所/群馬県富岡市富岡1-1
営業時間/9:00~17:00(入場は16:30まで)
料金/1,000円
休/12月29日~31日
アクセス/電車:上信電鉄上州富岡駅から徒歩約15分、車:上信越自動車道富岡ICから約10分
電話/0274-67-0075(場内総合案内所)
好んで食べた郷土料理・煮ぼうとうを
深谷市の郷土料理で、渋沢栄一も好んで食べたといわれている「煮ぼうとう」。煮ぼうとうは、深谷ねぎや地元で獲れる野菜などといっしょに幅2.5cm、厚さ1.5mmの幅広の麺を生麺の状態から煮込み、醤油で味を付ける深谷市の冬の定番料理です。渋沢の命日である11月11日には、学校給食にも出されるといいます。
令和2(2020)年1月、渋沢の生家「中の家」の隣に古民家を活用した「麺屋忠兵衛」がオープン。野菜たっぷりでとろみのある煮ぼうとうを食べれば、体をぽかぽかに温めてくれます。店内は畳敷きで、和の空間を楽しみながらいただけます。床の間には、渋沢が麺屋忠兵衛の当主の祖先に贈った直筆の書が掛けられています。運営している新吉は、製麺業を行っているので、市内の店舗で生麺を買っていくのもおすすめです。
麺屋忠兵衛
住所/埼玉県深谷市血洗島247-1
営業時間/11:30~14:00
休/年末年始
アクセス/電車:JR高崎線、湘南新宿ライン深谷駅からタクシーで約20分、車:深谷バイパス上武ICから約15分
電話/048-598-2410