旨い酒には、理由がある! ビールおねえさん・古賀麻里沙が行く 至高のビール旅 in 宇都宮

合格率が5%程度という「日本ビール検定1級(通称:びあけん)」を所持する
“ビールおねえさん”こと古賀麻里沙さん。
旅色アンバサダーとしても毎月「ビール旅」連載記事を執筆し、
自らオリジナルビールを開発するほどビール愛に溢れる古賀さんは、
ビールを求めて旅に出ることもしばしば。
今回は、日本有数のビール麦の産地でもあるという栃木県へ。
宇都宮産の麦芽にこだわったブルワリーがあるとのことで、
宇都宮市へ足を運びました。

写真/橋本千尋 文/古賀麻里沙

ビール豆知識① 栃木県は日本有数のビール麦産地

麦のお茶は麦茶、麦の酒はビール(麦酒)。同じ麦ですが、この2つは全くの別物です。一般的に麦茶に使われるのは六条大麦、ビールに使われるのは二条大麦です。栃木県は明治から続く日本有数の麦の名産地で、なかでも二条大麦は全国で第2位の生産量を誇ります。二条大麦にはランクがあって、ランクが高いものはビールづくりに、低いものは家畜たちの餌として使われます。ビールに使われる原料としての麦はここ100年くらい全国一位をキープしているそうですよ。麦づくりが得意な地で造られるビールはきっとおいしいに決まっていますよね。

至高のビール旅1 東京ドーム10個分の巨大道の駅内にある ろまんちっく村ブルワリー

ろまんちっく村ブルワリー
ろまんちっく村ブルワリー

農場あり、温泉あり、宿泊施設あり、そして醸造所あり。とあるまちの話でしょうか? いえいえ、道の駅の話です。宇都宮にある「道の駅うつのみや ろまんちっく村」はとにかく敷地が広大で、その大きさはなんと東京ドーム10個分。その中に、宇都宮産の麦芽を使用したビールを造っている醸造所があるんです。

普段から一般の方の醸造所見学を行っているとのことで、ビールの造り方や原材料についてブルワーの吉清さんに伺いながら、私も醸造所をのぞかせてもらいました。大きなタンクがずらりと並んでいて、すごい迫力!

ろまんちっく村ブルワリー

この道の駅はもともと、宇都宮市制100周年記念事業の一環で農業をテーマとして作られました。地元産の農作物を使ってビールを造ることで農業を応援しよう、ということからビール造りがはじまり、ビールを通して地域を活気づけるため、「栃木県産」「宇都宮産」というところを大切にしているのだそうです。

至高のビール旅2 見学したブルワリーで造られたビールを早速! 村の食堂・畑の台所 麦の楽園

村の食堂・畑の台所 麦の楽園

先ほど見学した醸造所のすぐ隣には、レストランがあります。天井が高くて開放感たっぷりの店内。うしろにあるタンクは、まさに私がさっき見学していた場所です。醸造所見学中にここで造られるビールのお話やこだわりをたくさん聞いて、そろそろビールが飲みたくなってきたので……宇都宮産の麦芽を100%使用しているという「麦太郎」をいただくことに。

村の食堂・畑の台所 麦の楽園
宇都宮産ニューサチホゴールデン麦芽を100%使用した
「麦太郎」640円
「ゆめポークのハンバーグ」1,230円
村の食堂・畑の台所 麦の楽園

美しい黄金色に光り輝く姿が、麦畑を連想させます。真っ白できめ細かい泡は口当たりが滑らか。一口飲むと麦の柔らかな甘みとしっかりとしたコクがたっぷりと広がります。レストランにあるメニューはどれもビールとの相性抜群とのことで、宇都宮産とちぎゆめポークで作った「ゆめポークのハンバーグ」を注文しました。こんがりと焼き上げられたハンバーグは色白で上品。口に含むとびっくりするくらいにフワッフワの食感です。豚肉の優しい甘みと旨味がオリジナルのポン酢ソースと絶妙にマッチしていて、すっきりとしたビールと、とにかく合う! ビールについてしっかりと学んで、思いがより高まったところで飲むビールはいつもの100倍おいしく感じます。

村の食堂・畑の台所 麦の楽園
村の食堂・畑の台所 麦の楽園
ろまんちっく村ブルワリー
ろまんちっく村ブルワリー

住所/栃木県宇都宮市新里町丙254
電話/028-665-8800
※醸造所見学の詳細については公式HP参照

村の食堂・畑の台所 麦の楽園
村の食堂・畑の台所 麦の楽園

住所/栃木県宇都宮市新里町丙254
電話/028-665-8800
営業時間/11:00~15:30(LO15:00)、
     17:00~21:00(LO20:30)
定休日/不定休 ※ろまんちっく村に準ずる

至高のビール旅3 こんなのあり!? 新しさを追い求める 栃木マイクロブルワリー

栃木マイクロブルワリー
栃木マイクロブルワリー

続いてやってきたのは、定番ビールを持たず、年間なんと90種類以上のビールを造っているというブルーパブ。特徴は、地元農家の野菜や果物、ハーブを原料に使っていること。アスパラ、大根、イチゴ、唐辛子、バジルなど種類はさまざまで、傷物や規格外のB級品を使っているんだそうですよ。SDGsを意識したビール造り、素晴らしいですね。

栃木マイクロブルワリー
特別に醸造所も見せてもらいました。オーナー兼ブルワーの横須賀さんとのビールトークが止まりません

オーナー兼ブルワーの横須賀さんおすすめのブラウンエールをいただきました。乾杯! 炎天下で熱った体に染み渡るーーー! 麦の香ばしい甘味が感じられ、見た目よりもフルーティーですっきり。飲みやすくて、これはスイスイといっちゃいますね。ビールの名前は「いけだ」。ん……? いけだ……?

栃木マイクロブルワリー
栃木マイクロブルワリー
ブラウンエール「いけだ」500円

実は栃木マイクロブルワリーでは、お客さんがビールのネーミングをしているとのことで、このビールは「いけだ」さんが名付けたそうです。ビアスタイルも味もなにも関係がない、自由なスタイルに脱帽です。

栃木マイクロブルワリー
壁に、なにやら気になる紙が貼られているのを発見!

お客さん巻き込み型のサービスはネーミングだけではありません。壁に貼られた紙に、なにやら“正”の字がびっしり。これは次のビールの原料になる素材のアイデアを募っているんです。納豆、イグサ、正露丸……あやしいものもあるな~と眺めていたら、カメムシの文字が。えっ……!? カ、カメムシ!? ひえ~カメムシのビールってありなの? とラインナップにおののいていたら、「カメムシはしっかりとフレーバーを感じますからね」と横須賀さん。思わず逃げたくなるようなカメムシのあの独特な匂いも、ブルワーからすると大事な“フレーバー”になるんですね。正の字が10個溜まると実際にその素材を使ったビールを醸造するんだそう。ちなみにカメムシには一票入っていました。

栃木マイクロブルワリー
栃木マイクロブルワリー

住所/栃木県宇都宮市東塙田1-5-12
電話/028-622-1314
営業時間/販売11:00~21:00、飲食16:00~21:00
定休日/不定休

至高のビール旅4 “カクテルのまち” BLUE MAGIC

BLUE MAGIC
BLUE MAGIC
10種類のタップ
BLUE MAGIC

3軒目は、〆にふさわしいこちらにやってきました。お洒落で雰囲気抜群のブルーパブです。素敵なバーカウンターにずらりと並ぶタップがキラキラと輝いていて、眩しい……! 店名について店長の中尾さんに尋ねると、「ビール造りは手品みたいなんですよね。だからブルーマジックという店名です。原材料を“マジック”のようにビールに“かえる”。カエルのマークをモチーフにしているのもそこからきています」と教えてくれました。バーカウンターで飲んでいて好きなのは、こんな風にお店の人と店名についてとかこだわりとか、ビールについて深く語り合えること。これから造ってみたいビールプランなんかを聞くのもワクワクします。

BLUE MAGIC

この日は平日の昼間だったのですが、常連さんが続々とやってきて店内は賑わっていました。地元に愛されるお店なんですね。常連さんたちに混ざって、私も早速ビールをいただくことに。苦味と香りが強いビアスタイルのIPAを注文しました。目の前のタップで入れてくれるビールに、期待は高まるばかり。この日の宇都宮は本当に暑くて暑くて……一気にビールを流し込みます! 柑橘系のフルーティーな香りが鼻腔をくすぐって、一口含むと喉にグッとくるジューシーな苦味。この飲みごたえ、たまりません。

BLUE MAGIC
BLUE MAGIC
IPA「ハイ10ション」レギュラーサイズ1,000円

ビール豆知識② 銀座レベルのバー業界

宇都宮はバーの軒数がとても多いまちです。日本バーテンダー協会主催の「カクテルコンペティション」で優勝したバーテンダーの数は全国最多で、銀座並みのハイレベルなお店が並んでいます。バー好きの間では「カクテルのまち」として有名で、昼は餃子、夜はバー巡りをするという楽しみ方が人気なんだとか。ちなみにまちの中心に宇都宮二荒山神社があるのですが、その一角には酒の神様が祀られているそうですよ。

BLUE MAGIC

カウンターで店員さんとのお話を満喫して、外にも席があったことを思い出しました。入口に1席だけあるテラス席。天気の良い日だったので、外でも一瞬飲ませてもらいました。太陽を浴びて、冷えたビールを流し込む時間……天国。宇都宮ビール旅の〆にふさわしいです。

BLUE MAGIC
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住所/栃木県宇都宮市池上町3-8
電話/028-307-0971
営業時間/平日15:00~22:00、土曜日12:00~22:00、
     日・祝日12:00~21:00
定休日/月~水曜日、そのほかイベントなどで不定休あり

宇都宮ビール旅を終えて

今回初めて宇都宮を訪れたのですが、どこに行っても地域に根ざしていて地元愛をひしひしと感じられました。広大で肥沃な土地や水資源など、農業を行うのにとても恵まれた環境なので、昔から農家が多いんだそうです。まち全体が手を取り合って、地元を盛り上げていこうとする動きは大事ですよね。日本中の魅力を、私もビールを通して伝えるお手伝いができたらなと思います。当初は「宇都宮といえば絶対に餃子とビールだ!」と意気込んでいたのですが、餃子以外にもたくさんの魅力に出会えた、宇都宮ビール旅となりました。

古賀麻里沙 1987年生まれ、福岡県出身。キャスター、タレント。食べることと飲むことが大好きで、日々更新しているインスタグラムとYouTubeではさまざまなビールとおつまみのペアリングを発信している。日本ビール検定1級を所持し、HOPPIN’ GARAGE公認の“ビールおねえさん”として活躍中。好きなビアスタイルはIPAで、ビールの輪を広げるため、日々奮闘中。