テーマのある旅 隈研吾の木造建築を訪ねる

高知に息づく隈研吾の木造建築を訪ねる

高知県では木材を用いた自然に優しい“和”の建築が、注目されています。
きっかけとなったのは、新国立競技場のデザインを手がけた、日本を代表する建築家・隈研吾氏です。
1987年、隈氏は梼原町ゆすはらちょうを訪れ、木造の芝居小屋「ゆすはら座(梼原公民館)」に感銘を受け、保存活動に参加。
以後、町とのタッグのもと、木材を使ってさまざまな建物を誕生させてきました。
今回は「雲の上の町」の別名を持つ梼原町にある隈氏設計の3つの建物をご紹介します。
ほかにも、高知県内には高知駅、高知県立高知城歴史博物館など、
木材を使った印象的な建築物があるので、併せて訪れるのもおすすめです。

文/合津玲子

隈研吾建築 01 木に癒されながら読書が楽しめる 雲の上の図書館

雲の上の図書館
雲の上の図書館
雲の上の図書館

2018年(平成30)、梼原町の地域づくりの基本理念「人と自然が共生し輝く梼原構想」の中核施設として誕生した図書館です。館内には、町や県産材であるスギやヒノキがふんだんに使われており、なかでも天井から無数に出ている木材たちは芳香を放ち、森にいる気分が味わえます。入館する時は靴を脱いで入るようになっており、床に座ったり手で触れたりすることで木の感触を楽しめるのだとか。1階の交流広場には、棚田をイメージした空間が広がり、映画鑑賞やワークショップなどミニイベントも随時開催しています。2階に上がると、およそ6万冊の本がテーマごとにずらり。ゆったりとしたソファもあるコミュニケーションラウンジや井戸端エリア(フリースペース)などで、好きな本を読みながら仲間と楽しい時間が過ごせます。

雲の上の図書館 住所/高知県高岡郡梼原町梼原1212-2
電話/0889-65-1900
時間/9:00~20:00
休館日/火曜日、最終週の金曜日

まちの駅「ゆすはら」

隈研吾建築 02 茅葺屋根がひときわ目をひく複合施設 まちの駅「ゆすはら」

特産物販売所とホテルが融合した、梼原町の顔として知られる施設。東側外壁に用いられた茅は、隈氏が町内の伝統的な茅葺屋根の手法を学び採用したもので、通気性、断熱性に優れ、快適な室内環境を保っています。施設内にはスギ丸太の柱が並んで立ち、木の香りを楽しみながら過ごせるのもうれしいところ。1階が販売所で、2・3階には宿泊施設「マルシェ・ユスハラ」が併設され、木の温もりを感じられるスタイリッシュな空間でゆったりとくつろげます。町全体をホテルと見立てて回遊する「分散型ホテル」の形式になっているので、夕食は町なかにある飲食店へ出かけ、風呂は「雲の上の温泉」を利用するのがおすすめ。シャトルバスも運行しているので気軽に移動できます。

まちの駅「ゆすはら」住所/高知県高岡郡梼原町梼原1196-1
電話/0889-65-1117(市場)/ 0889-65-1288(ホテル)
時間/市場8:30~18:00
定休日/無休

まちの駅「ゆすはら」

隈研吾建築 03 浮遊する舟を思わせる不思議な建物 雲の上のギャラリー

雲の上のギャラリー
雲の上のギャラリー
雲の上のギャラリー

梼原の森に溶け込むようデザインされた町のシンボル的な建築物です。「雲の上の温泉」に隣接し、渡り廊下棟、ギャラリー棟、ブリッジ棟から成り立っており、なかでも特徴的なのが渡り廊下棟です。「斗栱(ときょう)」という伝統的な木材表現をモチーフに、刎木(はねぎ)を何本も重ねながら桁という構造部材を乗せていく「やじろべえ型刎橋(はねばし)」という構造形式を採用し、世界でも類を見ない建築物になっています。下から上に向かって逆三角形になっており、その姿はまるで森のなかに浮かんだ舟のよう。廊下を歩けば、浮遊しているような気持ちを味わえます。渡り廊下の端に立って見渡すと、天井の木組みと連なる窓からの光のコントラストが幻想的なので、撮影スポットとして人気です。

雲の上のギャラリー 住所/高知県高岡郡梼原町太郎川3799-3
電話/0889-65-1250
時間/9:00~17:00
休館日/無休

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高知駅

クジラを思わせるダイナミックな屋根が魅力 高知駅

JR四国の高知駅最大の特徴は、駅をすっぽりと覆うアーチ状の大屋根です。大屋根を支えているのは、高知県産のスギ集成材と鉄骨トラスによるハイブリッド構造。建設当時、スギは大規模建築にはあまり使用されていませんでしたが、「森林県」高知県を代表する駅をつくろうというチャレンジ精神から、あえて使用したのだそう。北口駅前広場から立ち上がる大屋根の、高架を覆うユニークな形状は、駅前広場側の屋根の下に開放的な自由通路を生み、木の温もりを感じながら歩くことが可能に。南口からはホームが望め、解放感のある駅舎となっています。大屋根は「くじらドーム」の愛称で県民から親しまれているのだとか。

高知駅

住所/高知県高知市栄田町
電話/088-822-8229

歴史と現代建築技術が融合した建造物 高知県立高知城歴史博物館

高知県立高知城歴史博物館
高知県立高知城歴史博物館
高知県立高知城歴史博物館

高知県立高知城歴史博物館住所/高知県高知市追手筋2-7-5
電話/088-871-1600
時間/9:00~18:00(日曜日は8:00~18:00)
休館日/12月26日~31日
観覧料/500円(企画展開催期間中は700円)

高知県立高知城歴史博物館

江戸時代の天守が現存する高知城に隣接した、船をイメージしてつくられた歴史博物館です。内部の階段や壁、床などには高知県産材、土佐漆喰、土佐和紙、土佐打刃物(とさうちはもの)など、高知の伝統的産業と技術がふんだんに用いられているのも大きな特徴です。随所に土佐由来の菱模様(ひしもよう)が使われているのが興味深く、なかでも、正面のカーテンウォールは巨大な波紋を思わせ、圧巻です。館内の展望ロビーは高知城の景色を撮影するベストスポットとして知られ、四国八十八景にも選定されています。博物館全景を撮影するなら、高知城の追手門やお堀からがおすすめです。館内では、土佐藩主山内家伝来の約6万7000点におよぶ藩政資料などの歴史資料と、大名道具などの美術工芸品を収蔵。幕末の藩主・山内容堂(ようどう)ゆかりの資料や坂本龍馬の手紙など、幕末維新期の資料も収蔵しています。

高知県立高知城歴史博物館
高知県立高知城歴史博物館
高知県立高知城歴史博物館