『凪待ち』で香取さんが演じているのは、自らを「ろくでなし」と語り、辛い現実から逃げてしまう主人公・郁男。笑顔を封印したダークな香取さんが衝撃的ですが、郁男についてどう思いますか?
香取 郁男は本当にダメなやつだなと思いました。郁男と比べたら、僕はけっこう、いろいろ頑張っている方だと思います。
西田 頑張ってますよー(笑)。
香取 でも、この役のダメな部分とか「慎吾ちゃんにはないんじゃないか」って言われたりもするけど、ありますよね。やっぱり人間だから、下を向く時もいっぱいありますし、うまくいかないこととか辛いこと、苦しいこともいっぱいあるけど、基本アイドルなんで。やっぱりアイドルは笑顔でいないとダメじゃないですか(笑)。でも半分以上は、郁男みたいなところもあると思う。心を閉ざす感じとか。僕は基本的に心を閉ざしているので。
西田 今も閉ざしてる? ショックです(笑)。
香取 いやいやいや(笑)、仕事はしますよ。郁男は、考えてないからうまくいかないわけじゃなくて、すごい頭の中でいろいろ考えているんだろうな、とかは共感できる感じはありますね。
西田さんから見て、郁男を演じる香取さんはいかがでした?
西田 台本を読んだ時、このダメな人を(笑)香取さんがどういう風に演じるんだろうなって、すごく楽しみでした。それで現場に入ると、“郁男”がそこにいたから「おー!」と思って。石巻の風景の中で、海風にあたっている姿が“香取慎吾さん”っていうよりかは“郁男さん”だったなあと思います。やさぐれている感じがすごく素敵でした。衣裳を身に着けて、ちょっと不精なヒゲが生えて、髪もボサッとなっていて、実際香取さん寝不足だったと思うんですけど、クマの感じとかがすごくリアルで。本当にその街に住んでいるかのように存在していて、(演じる上で)すごく助けられました。
石巻での撮影で印象的だったことはありますか?
西田 石巻には今回初めて行かせていただいたんですけど、海の物がすごくおいしかったです。現場でもいただいたんですけど、香取さん、たくさんごちそうになって(笑)、ね。
香取 いっぱいいただきました。おいしかったー。ロケでずっと外にいるんですけど、(亜弓の実家として撮影された)メインのおうちのご近所に、おうちがあったのでピンポーンって入って……。
西田 香取さん、そのお宅に普通にいるんですよ(笑)。私知らなくて、「お手洗いお借りしたいな」と思ってウロウロしてたら、香取さんが「西田さん、こっちでお手洗い借りれば」ってそのお宅から出て来て。「とんでもない!」って言ったんですけど、香取さんが「どうぞどうぞ」って、もうわが家のように言うので(笑)、香取さんパワーでお借りしました。
香取 そこのおうちのリビングが僕の控室でした。本当に毎日行って、撮影の合間合間にお母さんやおばあちゃんとかとのんびりして。漁師さんのおうちだったんですけど、毎日おいしいものをいただいてました。最後、撮影が終わったあとにも挨拶に行って、お父さんたちとビール飲んで帰りました。
「心を閉ざしている」と言っていた方とは思えないエピソードですね……! そんな街の方との交流も含め、石巻だからこそできた映画でもありますよね。ちなみにこれまで見た中で、舞台が印象的で、旅に出たいなと思った映画はありますか?
香取 (少し考えてからひらめいたように)『セックス・アンド・ザ・シティ』! ニューヨークが好きだし、ファッションとかも見てて楽しかったから、ドラマも映画も全部見てます。あのニューヨークのマンションの前の階段の感じとかが、いつまでたっても憧れです。家の中の衣装部屋とかも。
西田 私も全部見てます。インテリアも素敵だしね。私は『ナビィの恋』という映画をやってから、それまで沖縄に行ったことがなかったんですけど、沖縄に毎年行くようになりました。沖縄がすごく気に入って、毎年家族で本島だったり離島だったり、転々と巡っています。
香取さんもよく旅行はされますか?
香取 好きです。よく行ってるなっていうくらい、けっこう行ってますよ。ヨーロッパはほとんど行ってます。イタリアだったらミラノ、ローマ、フィレンツェとか、スペインのサグラダ・ファミリアを見に行ったり。アートが好きだから、美術館に行ったり、世界遺産を見たり、それが刺激になって自分の世界が広がる感じがして。
石巻にもまた旅行で行きたいのでは?
香取 ごはん食べに行きたいです。ほんっとにおいしかったー!
共演者の方たちとご飯を食べたりも?
香取 そんな時間はまっっったくなかった。なかったですよね?
西田 なかったです。あ、でも娘役の(恒松)祐里ちゃんと一緒にご飯食べに行ったりはしましたけど……。香取さんは東京に戻って仕事してたから……。
香取 えー! してたんですか? 知らないところで!(笑)