ロニホーンの世界を覗き見。作品の中にある自然へトリップ
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こんにちは。外はひんやりと冷え、街にはイルミネーションが施され、日々少しずつ冬を感じています。暖かな中でアートに浸れる美術館が恋しくなる季節ですね。
今回は国内美術館初の個展を開催中というロニ・ホーンの世界を覗きに行ってきました。今回も舞台は箱根にあるポーラ美術館です。「水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる? Roni Horn: When You See Your Reflection in Water, Do You Recognize the Water in You?」という神秘的なタイトル、唆られませんか? 「どういう意味だろう?」という疑問から想像が膨らみ、鑑賞後は、一見相反するようで両立する複雑さとシンプルさに刺激を受けました。
ロニ・ホーンってどんなアーティスト?
ロニ・ホーンは1955年生まれのアーティストです。写真、彫刻、ドローイングなどさまざまな形式での表現を試み、現代アートの代表的存在となっています。ニューヨーク在住ですが、1975年に初めてアイスランドを訪れて以降、その風景に魅了されます。アイスランドへの滞在を繰り返したホーンは、厳しく荒涼とした自然と向き合う中で、一人でいることを自ら選択したそうです。
この展示では、近年の代表作であるガラスの彫刻作品を始め、1980年代から今日までの約40年間におよぶ作品群が展示されています。ロニ・ホーン展をより味わい深く鑑賞するキーワードは“水”だそう。一つの概念がさまざまな姿形で表現されるロニ・ホーンの作品は、環境や関わるものによって変化する“水”の性質を思い起こさせます。また東洋思想における水や川は、人間の精神のあり方や無常観を表してきました。水は、しばしばホーンの作品に登場するモティーフやテーマでもあるのだそうです。
人々が孤独を恐れたり、愛や人と人との関わりに暖かさを覚える世の中で、曖昧さや不確かなものを探し求め、表現したのでしょう。きっとロニ・ホーンのその体験が私たち見る側の人間に、展示会タイトルにもある“reflection"の時間を与えてくれるのです。さて、長くなりましたが、早速作品の方を紹介させていただきます!
“水”を感じる作品たち
入り口を通ると一番に大きな空間に置かれている丸いパステルカラー。こちらの作品、皆さんには何で作られているように見えますか? 遠くから見ると、私には柔らかいビニールのようなものの中にいっぱいの水が入っているように映りました。……が、すべてガラスでできているんです!
ガラスの表面がお水のように見えるのはなぜでしょう? とても不思議で神秘的でした。
上の作品は展示されていた中で、一番心の奥で好きと感じた深い海のように見える写真です。
濃いブルーのなかに垣間見えるエメラルドグリーンの水面を照らす柔らかい光に、思わず足を止めました。心が落ち着き、なのに切なく、ずっと見ていられる一枚です。
探求心に遊び心……ロニ・ホーンの意思や心を感じた作品
次はこちらの2つ並んだフクロウの作品。繊細で柔らかい色のフクロウの姿は絵画かと思ったのですが、実は写真作品だそう。どこか違うところがあるのかと思い探してみましたが、違いは見つからず。同じ写真だったと思います。本来ひとつであるはずの2つ並んだ写真を見比べていくうちに、アイデンティティの認識を揺さぶられたような感覚になりました。
写真や本が並べられた真っ暗な部屋。暗い中でスポットライトを当てられた作品たちは、コントラストによって際立つようにも見えます。
“黒”という色の中に海の青い色やさまざまな色のポートレイトを展示していることは、個人的に珍しいと感じました。海や水や、肌にも数え切れないほどの色があり、その色によって世の中には偏見や差別という悲しいジャッジも生まれています。一つひとつの瞬間が創り出す色や一人ひとりの人が持つ色はあまりに違うのに、それを言葉に振り分けるのはなんて難しいんだろう。そんなことを考えられる作品でした。
一度細かく裁断した紙を再びつなぎ合わせて制作されたというこちらの作品。一つひとつにメッセージが描かれているんです。遊び心をくすぐられ、一つずつ読み進めるのが楽しくなりました。明るい色使いのものなども展示されていたので、ぜひみなさんも自分の好きな作品を見つけてみてほしいです。
大きな空間の中に並べられたひとりの女性の顔。角度、表情など同じものは何ひとつなく、ひとりの人間と向き合う力強さを感じました。普段一緒に過ごす家族、親友、恋人でもこんなにたくさんの瞬間目をそらさずに見つめたことはありません。ロニ・ホーンの追求心が紛れもなく現れている作品でした。
おわりに
この展示会では、BEAMS DESIGNプロデュースによる展覧会オリジナルグッズも発売されています。とってもかわいいですよね。ファッション×アートは私も大好きな組みあわせです!
今回は私も普段見ているタイプではない作品の展示会で、新しい価値観や世界観を味わうことができました。アーティストの数だけ、新しい世界に触れることができるのが、アート旅の楽しいところ。ぜひみなさんもいろいろな作品に触れてみてくださいね。