「OKETA COLLECTION『Mariage −骨董から現代アート−』展」でユニークなコレクションに触れる旅

東京都

2022.06.20

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「OKETA COLLECTION『Mariage −骨董から現代アート−』展」でユニークなコレクションに触れる旅

こんにちは。関東地方は例年より早く梅雨入りしたそうで、なかなか晴れない日々が続きますね。今回はそんなじめじめを吹き飛ばすほどの素敵な展覧会、桶田夫妻の「OKETA COLLECTION『Mariage −骨董から現代アート−』展」へ行った時のことをご紹介します。

目次

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「OKETA COLLECTION『Mariage −骨董から現代アート−』展」の見どころ

テーマ①「身体」

テーマ②「カラー」

③「モノクローム」

桶田夫妻のセンスが光るOKETA COLLECTION 「Mariage -骨董から現代アート-」展へ行ってみてください

「OKETA COLLECTION『Mariage −骨董から現代アート−』展」の見どころ

本展ではコレクターの桶田俊二・聖子夫妻によって集められた骨董品や現代アートが展示されています。これらの作品を集めた期間は約20年! 前期と後期に分かれており、今回訪れた前期は「Mariage−骨董から現代アート−」展、2022年8月6日から10月16日まで開催される後期では「YES YOU CAN−アートからみる生きる力−」展と、それぞれ異なるテーマのものが展示されます。

前期の「Mariage−骨董から現代アート−」展では、桶田夫妻のアート収集の入り口でもあった骨董品と、現代アートを融合させた他にはない新しい展示の仕方をされているところが見どころです。タイトルにもなっている“mariage”には、フランス語で「異なる二つのものが交わることでお互いに輝き合える、より高め合える」という意味合いがあるそう。英語で言う “marriage
" (=結婚)という意味でもよく使われている単語ですよね!

ちなみに、桶田夫妻が作品の購入を決める時はほとんど一目惚れだそうで、30分以上悩んだことはないとのこと。展覧会では初公開のコレクションも含め、40点ほどの作品が三つのテーマに分けられて展示されています。それでは、作品を紹介していきますね。

テーマ①「身体」

「身体」を表現する展示から始まります。ディスプレイのされ方がとても面白いです。アート展覧会としては珍しく、壁がグリーンに塗られていたところも特徴的でした。では、ここからは展示品を1つずつ紹介していきます。

November 14,2016 (The End is Near)(マンゴ・トムソン)

《November 14,2016 (The End is Near)》マンゴ・トムソン /2019,Courtesy the artist, MAKI Gallery, and galerie frank elbaz.

《November 14,2016 (The End is Near)》マンゴ・トムソン /2019,Courtesy the artist, MAKI Gallery, and galerie frank elbaz.

始めは「終わりは近い」という意味を持つマンゴ・トムソンによる'November 14,2016 (The End is Near)'という作品からご紹介。始めからタイトルのインパクトが強いです。こちらの作品は鏡の中に人が写って、初めて成立すると言われています。自分の老いていく姿や時間の尊さを表現しているそう。私も鏡の中に入って撮影してみました。

Rabbit resting(クララ・クリスタローヴァ)

《Rabbit resting》クララ・クリスタローヴァ/2016,©Klara Kristalova; Courtesy of the artist and Perrotin.

《Rabbit resting》クララ・クリスタローヴァ/2016,©Klara Kristalova; Courtesy of the artist and Perrotin.

小さなうさぎがだらんと寝転がっているこちらの作品は、人間の感情を動物に写しながら製作されているそうです。だからでしょうか? 見れば見るほど愛おしく見えてきてしまう、愛着の湧く作品でした。

Wash N’ Set 2(チャバララ・セルフ)

《Wash N' Set 2》チャバララ・セルフ/2019, Courtesy of the artist and Pilar Corrias,London. Copyright of the artist.

《Wash N' Set 2》チャバララ・セルフ/2019, Courtesy of the artist and Pilar Corrias,London. Copyright of the artist.

OKETA COLLECTIONでは初となるチャバララ・セルフの作品。彼女は作品によく黒人女性を描くことで有名です。「古き時代からの差別を記録に残し、それをアートで表現する」という思いが込められています。中には誇張した表現で体を描いている作品があるのも特徴的。例えばおしりを強調するなど、インパクトの強いものもダイナミックに描いています。黄色いネオンの光は、明るいだけでなく暖かさも感じられました。

Yggdrasill 01(平子雄一)

《Yggdrasill 01》平子雄一/2020,@Yuichi Hirako Courtesy of KOTARO NUKAGA

《Yggdrasill 01》平子雄一/2020,@Yuichi Hirako Courtesy of KOTARO NUKAGA

植物と人間の距離感を表現しているという平子さんの作品。作品に書かれている「NO PLANTS NO LIFE」という文字から想像する方もいるかもしれないですが、彼の作品には「木」が描かれていて、初めて見たときからとても印象に残りました。ECO活動が盛んになり、地球や植物、動物への思いやりが重要視されるこの時代にも合っていることから、今注目されているアーティストの一人です。

Pyrite Eroded Rabbit(ダニエル・アーシャム)

《Pyrite Eroded Rabbit》ダニエル・アーシャム/2017,Courtesy Daniel Arsham and Perrotin.

《Pyrite Eroded Rabbit》ダニエル・アーシャム/2017,Courtesy Daniel Arsham and Perrotin.

Diorやポケモンとのコラボでも注目を浴びたダニエル・アーシャムの作品です。彼の作品はいつも化石のような儚さを持つ彫刻が特徴的。というのも、この作品は100年後に見つかった時を思い浮かべ、意識しながら製作しているそうです。触れたら壊れてしまいそうなくらい繊細に作られているところに、ユニークさと興味深さを感じます。

テーマ②「カラー」

「身体」のコーナーが終わったら、次は「カラー」に進みます。身体の展示とは異なり、カラフルな色使いが印象的です。

a window as a painting as a painting is a window(クレイグ・クチア)

《a window as a painting as a painting is a window》クレイグ・クチアCraig Kucia, a window as a painting as a painting is a window, 2022, Oil on linen, 198.12 x 292.1 centimeters (78 x 115 inches). Courtesy of the Artist and MAKI Gallery.

《a window as a painting as a painting is a window》クレイグ・クチアCraig Kucia, a window as a painting as a painting is a window, 2022, Oil on linen, 198.12 x 292.1 centimeters (78 x 115 inches). Courtesy of the Artist and MAKI Gallery.

新型コロナウイルスによる外出制限などにより、「室内からずっと窓の外を眺めることになるとは思わなかった」とコメントしているクレイグ・クチア。コロナの期間中に「窓」とい固定観念を取っ払い、室内の中でどう想像力を養うか、という感情と向き合ってきたそうです。例えば……

サボテンが窓を突き破っていたり、

窓の中にある窓からは、月が浮かんでいるように表現しています。

また、彼はくじらを不思議な生き物と捉えています。また、くじらは彼の作品のシンボルになっているそうです。この作品は桶田夫妻がこのコーナーをLAのような雰囲気にしたいと彼に依頼して描いてもらった作品で、本展で初公開となりました。

Maldon(ブライアン・ハート)

《Maldon》ブライアン・ハート/2021,© 2021 Brian Harte

《Maldon》ブライアン・ハート/2021,© 2021 Brian Harte

おしゃれでなおかつ、ファッショナブルなこちらの作品。絶妙な色合いと描き方のバランスがとてもよく表現されており、心惹かれます。インテリアとして飾りたくなりました。

曜変天目茶碗(桶谷寧)

《曜変天目茶碗》桶谷寧/2011©Yasushi Oketani

《曜変天目茶碗》桶谷寧/2011©Yasushi Oketani

まだ作り方が解明されていないという曜変天目の茶碗。日本に保管されているものが多いようです。いまだに作り方がわからない中、曜変天目を表現しようといろんな作家さんが試されているとのこと。宇宙を覗いたような美しい模様で、桶谷さんの中でも成功したと言える作品はとても少なく、貴重なものだそうです。

The Stride(上條晋)

《The Stride》上條晋/2021,©Susumu Kamijo

《The Stride》上條晋/2021,©Susumu Kamijo

プードルを多く描くことで知られている日本人アーティスト・上條晋。プードルは日本でも多く見られますよね。彼はプードルが飼い主によってさまざまなヘアスタイルにされていることが面白いと思い、作品に取り入れ始めたそうです。こちらの作品は2021年のアートフェア東京にも展示されており、個人的に一番印象に残った作品です。

No Words Today(ハビア・カジェハ)

《No Words Today》ハビア・カジェハ/2019, ©Javier Calleja Courtesy of the artist and NANZUKA

《No Words Today》ハビア・カジェハ/2019, ©Javier Calleja Courtesy of the artist and NANZUKA

スペイン人の作家であるハビア・カジェハ。前回のSBIアートオークションで高く評価された注目アーティストの一人です。彼の作品を見ると、女の子をモチーフにした絵画で知られるアーティストの奈良美智さんの作風にインスパイアされているのがよくわかりますよね。奈良さんの作品に出てくる少女の鋭い眼差しとは対照的に、パッチリとした明るい眼差しが印象的です。

③「モノクローム」

これまで「身体」「カラー」と展示を見てきました。次がいよいよ最後となる「モノクローム」の紹介です。

COMPO:L(TIDE(タイド))

《COMPO:L》TIDE(タイド)/2021,©TIDE / ©HENKYO

《COMPO:L》TIDE(タイド)/2021,©TIDE / ©HENKYO

猫がアイコンとなっている彼の、スカルプチャー(彫刻)と線で描かれた作品。立体的なドローイングと平面的なスカルプチャーのマリアージュがとても素敵なので、ぜひ目の前で見ていただきたい展示です。

Lady Dada(五木田智央)

《Lady Dada》五木田智央/2016,Tomoo Gokita. Courtesy of the artist and Taka Ishii Gallery

《Lady Dada》五木田智央/2016,Tomoo Gokita. Courtesy of the artist and Taka Ishii Gallery

顔を抽象的に描く作品が印象的な五木田さんのこちらの作品。ミステリアスかつモダンでかっこいい。洗練されていて、想像力が掻き立てられます。

PixCell-Deer #48(名和晃平)

《PixCell-Deer#48》名和晃平/2017,©Kohei Nawa | Sandwich

《PixCell-Deer#48》名和晃平/2017,©Kohei Nawa | Sandwich

最後は、桶田ご夫妻のコレクションで特に有名な、さまざまな大きさのガラスの球体で覆われ、中には本物の剥製が入れられているんです! 森の中で鹿に出会った時の状態を表現したということで、展示室のカーテンを開けるとちょうど鹿と目があうようにディスプレイされていました。モノクロの部屋の中で照らされたガラスに光が入り込み、とても美しいコントラストです。

桶田夫妻のセンスが光るOKETA COLLECTION 「Mariage -骨董から現代アート-」展へ行ってみてください

さて、たくさん紹介しましたがどうでしたか? 今回紹介した作品以外にも魅力的な展示がたくさんあり、見ごたえ抜群でした。展覧会の会場がある寺田倉庫のあたりは、お出かけ先としてもとっても楽しめるエリア。展覧会を目的とした旅としても、周辺エリアを満喫した後に立ち寄るのもおすすめです。ぜひ、桶田夫妻のセンスが光るOKETA COLLECTION「Mariage −骨董から現代アート−」展へ足を運んでみてください。

◆OKETA COLLECTION 「Mariage -骨董から現代アート-」展
会場:東京都品川区東品川 2-6-10 寺⽥倉庫G号(WHAT MUSEUM 2F)
期間:〜2022年7月3日(日)
休館日:月曜日(祝日の場合、翌火曜日休館)
開館時間:11:00〜18:00(最終入館17:00)
入館料:一般1,200円、大学生・専門学生700円、中高生・小学生以下無料

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アート旅 大石絵理

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大石絵理

1993年12月22日、東京都生まれ。高校2年生の時にモデルとしてデビュー。ロンドン留学時代、美術館に訪れたことがきっかけでアート鑑賞が趣味に。モデルとして活動し、アパレルブランド「KOL」をプロデュースしている。また、TV、雑誌、広告と多岐にわたって活動中。

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