【川瀬良子の農業旅】千葉県の住宅街にある鵜殿シトラスファームで育てるレモンとライム

千葉県

2023.10.31

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【川瀬良子の農業旅】千葉県の住宅街にある鵜殿シトラスファームで育てるレモンとライム

こんにちは! 農業旅を連載している、旅色アンバサダーの川瀬良子です。輸入が多く、国産は珍しいレモンとライム。国産レモンの収穫量は広島県が6割、愛媛県が2割と、全体の8割を占めており、瀬戸内レモンとよばれています。またライムのほとんどは、愛媛県産です。そんななか、都内から電車で行ける千葉県松戸市にレモンとライムを栽培する「鵜殿(うどの)シトラスファーム」へ行ってきました!

目次

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鵜殿さんとの出会い

オレンジ色のレモン!? 「マイヤーレモン」

レモンとライムの収穫体験

採れたての柑橘類を使ったオリジナルドリンクを「M+」で

さいごに

鵜殿さんとの出会い

経営者の鵜殿(うどの)さんと出会ったのは2020年。パーソナリティを務めているラジオ番組TFM&JFN「あぐりずむ」での取材がきっかけでした。柑橘、特にレモンは温暖な気候でないと育たず、日本の北限は茨城県だそう。そのような中で都市部でも立派に育つことに驚き、取材後すぐにインスタグラムで「鵜殿シトラスファーム」をフォロー。昨年に続いた猛暑や水不足の大変さも発信されていたので気かけていました。しかし今年の8月末に木になっている大きなレモンが投稿されたのです。「今年も無事に実ったんだ! 」と安堵しました。そして、収穫前のたくさん実っている姿を間近に見たい思いに駆られ、農業旅に行ってきました。

オレンジ色のレモン!? 「マイヤーレモン」

鵜殿敏弘さん(左)、息子・崇史さん(中央)

松戸市内にある畑は5カ所、合わせて5千平米ほど。約400本の木を弟の芳行さん、息子の崇史さんの3人で管理をしています。最初に案内してもらった畑は、新松戸駅から車で10分、小高い丘の住宅街の中にあり、斜面を利用したレモン畑です。訪れたときは、実がまだ緑色だったので一見わからなかったのですが、木に近づいて見てみると、大きなレモンを発見!

オレンジとレモンの自然交雑で誕生したといわれている「マイヤーレモン」。普通のレモンと比べてふっくらと丸みがあります。果皮は熟してくるとオレンジ色になるそうですが、今の見た目はレモンというよりオレンジのよう。コロンと丸みがあって、かわいい形をしています。

「たくさん実ってますね~! 」と声をかけると、崇史さん「去年の雨不足が深刻で、水の設備を見直したり木をばっさり剪定したりして、そのおかげもあってか、今年もようやく実がつきました」。鵜殿さんも「どうしても虫の被害はあるけど、なんとか 実りましたね~」とのこと。お二人ともレモンを愛でるように触りながら収穫する姿を見て、実るまでに計り知れないご苦労があることを感じました。

レモンとライムの収穫体験

続いて案内してくれたのは、住宅に囲まれた平らな畑。住宅に囲まれているからこそ、建物が風を遮ってくれるというメリットもあるそうです。「松戸も冬にすごく寒くなったときがありました。レモンは寒さに強くないので、そのときは畑の木が根元から3分の1の高さまで一気に枯れてしまったこともあるんですよ」と鵜殿さん。都市農業に関わらず、自然相手の農業の大変さが伺えます。

璃の香

キンカンライムのフォルムの可愛いらしさよ! つい、たくさん収穫しちゃいました。

ここでは、皮が薄くまろやかな酸味が特徴の「璃の香(りのか)」というレモンと、金柑とライムの交雑種「キンカンライム」の2種類を育てています。璃の香の実は大きく、お馴染みのレモンらしい形をしています。対照的にキンカンライムは小ぶり。どちらも初めて見る品種です。

こちらが配管の部品

すっぽりハマってしまうので、収穫はまだ先。

収穫OKのサイズ!

収穫のお手伝いのときに鵜殿さん流のキンカンライムの収穫方法を教えてもらいました。ホームセンターで買った配管の部品をキンカンライムに当てて、入らなければOK。入ってしまうと、サイズはまだ小さいと判断するのだそう。とてもユニーク! 収穫する量がとても多いのですが、1つ1つチェックする丁寧さに驚きです。収穫期は気の遠くなるような作業だろうな……。

レモンやライムは、直売所「MONPE(モンペ)」で購入できます。今年は10月の中旬から営業し朝採れの柑橘類を販売。毎日完売になるほどの人気ぶりだそうです。松戸市に住んでいる友人から「MONPEが開くのを地元の人たちは楽しみにしていて、毎年行列ができるぐらい!」と教えてもらいました。レモンやライムの時期を楽しむなんて、オシャレでご近所のみなさんがうらやましいです。また鵜殿シトラスファームが、地域の食文化もに影響しているなんて、農家さんってやはりすごい職業だな。

◆柑橘類直売所 MONPE
住所:千葉県松戸市新松戸6-16
電話:090-4955-4543
営業期間:2023年10月中旬~2023年12月末 ※変更になる可能性もありますので、詳しくはお電話でお問い合わせください。
営業時間:10:00~なくなり次第終了
定休日:月曜日定休 ※月曜日が祝日の場合は、翌火曜日

採れたての柑橘類を使ったオリジナルドリンクを「M+」で

MONPEの隣には、通年で営業している鵜殿シトラスファームの柑橘類を使ったドリンク販売店 M+(エムプラス)があります。鵜殿さんの長女・万記子さんが店長です。

収穫したばかりのキンカンライムをたっぷり使ったノンアルコール「モヒート」を作っていただきました。味わいは爽快! のど越しはもちろん、炭酸に負けないフレッシュなキンカンライムの香りと程よい酸味がおいしい。

MONPEで休憩していると、「松戸のバーで働いているのですが、今年の販売はいつからですか? 」と訪ねてくる方がいたり、M+でドリンクを買って、のんびり過ごしているご家族がいたりと、地元に根付いているところが素敵でした。

◆M+
営業時間:10:00~17:00
定休日:月・火曜日

公式Instagramはこちら

さいごに

鵜殿さんは、松戸でお父さんが始めた畑作農家のあとを継ぎました。今までに、蘭などの花、トマト、キュウリ、ソラマメ、柿などの栽培にもチャレンジしたそう。虫の被害に悩まされ、柿を甘くする技術もわからなかったといいます。2008年頃に、弟・芳行さんの経営する花屋で売れ残ったレモンの木を畑に植えてみたところ、虫の被害も少なく、松戸でもレモンがしっかり育つことを発見しました。「この頃から温暖化の影響を感じていましたし、柿みたいに甘いものは難しいけど、酸っぱいものなら何とかなるだろう」と考え、2010年頃、野菜からレモンに切り替える準備を始めて、2013年にレモンの苗を植え付け栽培を本格的にスタート。「虫でかゆくなるのももう嫌だし、酸っぱければ良いと思ったんですよ~」と、笑顔で話す姿が印象的でした。

今年で植え付けてからちょうど10年が経ちました。とはいえ、木に実が付くまで4、5年かかるので、柑橘で収入を得られるようになったのはここ5年。さらに、近年の異常な暑さで、人の日焼けのように実が焼けてしまったり、風が通らなくて虫が発生したり、とにかく大変だったそうです。暑さだけではなく寒過ぎても木にとっては負担になり、1つの畑で半分の木が枯れてしまうこともあったため年中気を抜くことはできません。また住宅街での柑橘の栽培はあまり例がなく、鵜殿さんは日々試行錯誤しながら栽培を続けています。松戸市で育つなんて! 日々の研究の賜物ですね。

※今回は特別にの店内で調理してもらいました

「せっかくなので、食べてみて下さい」と、璃の香をスライスしてくれました。爽やかないい香りが室内いっぱいに広がります。食べてみると、皮が薄くて苦味がなく程よい酸味があっておいしい! パクパク何枚も食べ進めてしまうぐらい、苦味、酸味がまろやかなんです。「スライスをそのままサラダに入れる人もいますよ〜」とも教えてくれました。私はレモンを買っても、揚げ物や飲み物に果汁を絞るくらいしか使っていなかったのですが、皮ごと食べるなんて驚きです。レモンの楽しみ方って幅広いんですね〜。

フィンガーライム

名前の通り、指のような細長い果形が特徴

切ると、粒がぷちぷちっと出てくるんです!

大きなレモン・ポンテローザ

縞模様のピンクレモネードレモン

M+の前の畑では、とても珍しいフィンガーライムや、大きな品種レモン・ポンテローザ、ピンクレモネードレモンなどを育てています。レモン、ライム、としか知らなかった私は、こんなにたくさんの品種があることにとても驚きました。

今回、酸っぱければいいと思ったんですよ〜! と笑顔で語る鵜殿さんが、1番印象的でした(笑)。しかし、甘いものを作らず酸っぱいものを作るという、逆転の発想は本当にすごいですよね。 今や松戸の名物にもなりつつある鵜殿シトラスファームの柑橘。大変なこともたくさんあると思いますが、鵜殿ファミリーのユーモアと絆があればきっと乗り超えられると思います。鵜殿さん、崇史さん、万記子さん、ありがとうございました!

鵜殿シトラスファームのレモン・ライム。防腐剤やワックスなどを使っていないので、皮ごと丸ごといろんな料理や飲物に使えます。鵜殿さんは、お酒に入れて楽しむことが多いようです! 気になった方は、ぜひ直売所のMONPEや、M+に足を運んでみてくださいね。

◆鵜殿シトラスファーム
住所:千葉県松戸市新松戸6-16
営業時間:10:00~17:00
公式Instagram:@udonocitrusfarm

公式ホームページはこちら
公式instagramはこちら

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農業旅 川瀬良子

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川瀬良子

静岡県出身。NHK 『趣味の園芸 やさいの時間』司会を10年間務める。現在はラジオパーソナリティとしてTFM&JFN日本の農業を応援する番組『あぐりずむ』などで活躍中。2016年『川瀬良子のプランター野菜』(主婦と生活社)出版。 自身が農業好きになったように、一人でも多くの人に家庭菜園、農業に興味を持ってもらいたい!と、きっかけづくりになるようなモノ・コトを創り出している。

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