音旅演出家Ⓡ・大迫淳英さんに聞く旅先プレイリスト4曲

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2022.02.04

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音旅演出家Ⓡ・大迫淳英さんに聞く旅先プレイリスト4曲

“旅を音楽で演出し、「音」で「旅」を感じる事ができる演出を施す”音旅演出家の大迫淳英さん。今回は、旅のシーン別におすすめの曲を紹介していただきました。

文・写真/大迫淳英

目次

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映画のような旅に欠かせないのは「音」と「ストーリー」

期待感と高揚感に包まれるオープニング「A Path To Solitude」

旅の中盤に訪れる夢見心地な感覚「グノーのアヴェ・マリア」

夜は人の温もりを感じる心地よいジャズ「Say It」

クライマックスはカーペンターの日本公演から「カレンのテーマ」

おわりに

映画のような旅に欠かせないのは「音」と「ストーリー」

映画のヒロインになるような旅、してみたくありませんか?

音楽の効果でグッと感動し、心が動かされる映画。誰しも映画内の音楽をきっかけに涙が出るほど感動した経験があるのではないでしょうか。この「感動」という言葉、ひと言でまとめられてしまいがちですが、その中には似ているようで、まったく違った情景が展開しています。

一般的な「旅行」は物質的なものを辿ります。もちろん、食事も景色も。たとえば絶景やアートを見て素晴らしいと思う時、思わず「ため息」をついてしまう、といった感覚。そこにあるのは「驚嘆」です。それだけでも充分に素晴らしいものですが、ここに「音」と「ストーリー」という、形のない現象がついたらどうでしょう。人は素晴らしい「現象」に触れることで、涙が出るような、心を揺さぶられるような感覚、「感動」を覚えるわけです。

そんな“音旅”を演出するのが「音旅演出家」です。
さあ、これから音で「あなたの旅」を演出します。

期待感と高揚感に包まれるオープニング「A Path To Solitude」

人が本能的に感じる音。自然の中に身を置き、いまから始まる旅へ、心のキャンパスを真っ白にする事ができる1曲です。まさにサウンドスケープ。ネイチャー・レコーディングの権威である「ダン・ギブソン」がとらえた自然の音に、穏やかなピアノがカバーされています。

♪A Path To Solitude/Dan Gibson「Forest Piano」より

タイトルは直訳すれば「孤独への道」と少し淋しい感じですが、この曲の真意はそういった「孤独」ではなく、森の中にひとり佇む、自由を手に入れるようなニュアンスだと解釈しています。旅に出るということも、あなたを取り巻く日常から独り離れ自由な道を進むこと。まさにA Path To Solitudeではないでしょうか。

自然の音に、音楽が加わった 「Forest Piano」。そこに広がる世界はまさに「ため息がでる」感動の瞬間です。なかでも「孤独」なひとりの世界を楽しむ音楽からは、何故か涙があふれます。音楽で涙を流すという体験。私が音旅演出家として、音楽で旅を彩ってきた多くのシーンでお客様のそのような様子を目にしてきました。あなたの中にすーっと入ってくる内的な感覚、感動が呼び起こされるはずです。「ため息」の世界と「涙」の世界を繋ぎ、私達を感動の旅に誘ってくれます。

旅の中盤に訪れる夢見心地な感覚「グノーのアヴェ・マリア」

さて、旅に出たあなたの前にはどんな光景が広がっているでしょう。その景色を眺めながら、もしくは、その時間にふわりと漂いながら聴いていただきたい曲。クラシックの名曲「グノーのアヴェ・マリア」です。ピアノはバッハが作曲した平均律クラヴィーア第1巻、第1番の前奏曲。その名曲にグノーが新たにヴァイオリンの旋律を加えました。時を越え、音が重なり、人の心を揺さぶるメロディー。この曲は私の演奏でお届けします。

♪グノーのアヴェ・マリア/大迫淳英「草枕」より

CDのタイトルから夏目漱石を思い浮かべる方が多いのではないかと思いますが、私が付けたこの「草枕」は「旅の枕」のことです。ほのぼのとした旅路で、草を枕に夢見心地な旅を感じて欲しいと願い名付けました。実際の旅に行かなくても、このCDを聴きうとうとしながら自分の心の中を旅してもらえたらなぁという願いも込めています。

夜は人の温もりを感じる心地よいジャズ「Say It」

さて、夜も更けてきました。少しお酒でもかたむけながら心地良いジャズでお包みしましょう。ジョンコルトレーンの「バラード」から「Say It」をお届けします。

♪Say It/ジョンコルトレーン「Ballade」より

ジャズ界のスーパースターによる完璧な演奏ですが、どこか人間味を感じるのです。旅は人がするもの。また旅先での人の出会い、関わりが何よりも旅の醍醐味です。哀愁や人の温もりを感じ、名曲の世界に佇むような旅があります。そのような旅に出会えますように。

クライマックスはカーペンターの日本公演から「カレンのテーマ」

素敵な旅もクライマックス。旅の最後にお届けするのは、リチャード・カーペンターのCDから「カレンのテーマ」。カーペンターズのお兄さんですね。私が若いころ実はリチャード・カーペンターと共演したことがあるのです。それは1997年の事。リチャード・カーペンターが世界ツアーを展開し、その日本公演で同じステージに立たせていただいた時のCDです。

リチャードはカレンが亡くなってからカレンに代わる声を探し続けていました。しかし、カレンの声は唯一のもの。代わる声などありません。そして、リチャードは自分のピアノで全てを表現する形に変え、新たなステージセットで臨んだツアーでした。これからお届けする曲は、リチャードがカレンを想って書いたやさしい旋律です。

♪カレンのテーマ/リチャード・カーペンター「Richard Carpenter - Pianist, Arranger, Composer, Conductor」より

この曲でリチャードはカレンの思い出と再会したと思うのです。それは「永遠との出逢い」です。旅も最後は「思い出」という永遠の形になります。みなさんの心に音楽とともに刻まれた記憶も、音楽とともにいつでも蘇ります。

おわりに

サウンドトラックを聴くと、その映画のシーンが鮮明に蘇ります。音楽は記憶を紐解くキーのようなものです。音楽があなたの人生に記憶を刻み、音楽がそれを呼び起こすことを願って。今回紹介した楽曲が、あなたがヒロインの旅をより感動するものに演出できれば幸いです。


◆大迫淳英

日本で唯一、旅を創り、旅を彩るヴァイオリニスト・音旅演出家。皇太子殿下(現 今上天皇)ご夫妻の御前で演奏やベルリン・フィル ヴァイオリン・アンサンブルの日本ツアーでソリストを務める。これまでにJR九州クルーズトレイン「ななつ星 in 九州」の音楽演出をプロデュースし、現在は東急「THE ROYAL EXPRESS」の音楽演出、JTBロイヤルロード銀座〈夢の休日〉感動の響きアンバサダーとして、これまでに無かった新しい音楽が寄り添う旅を企画。エフエムたちかわ「サウンド・クルーズ・ジャーニー」のパーソナリティとして「音と旅」の番組を担当している。
HP:https://jun-ei.jp/

音旅演出家Ⓡ・大迫淳英さんに聞く音楽が彩る旅の情景

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